第75話

文字数 620文字

 光姫と医務室へと向かう途中。武は一時だけタケルになった。
「光姫。他の者は強いのか?」
「ええ……タケル様も驚きましょう」
 光姫はニッコリ微笑んで、
「それでは、里奈と湯築さんの稽古を、後で見て差し上げて下さい」
 タケルが武に変わった。
「ええ。是非……」
「里奈の開眼ももうそろそろですよ。武さん」

 道中、複数の巫女が通路を歩いていたが、皆武の口の周りの血で心配そうな顔をした。
 医務室では武の胸に光姫が丁寧に薬草を塗り込み包帯を巻いていた。

「御怪我は? まだ痛みますか? 少しでも痛いのでしたら、遠慮なく御言いくださいね」

 光姫のとても優しい声音に、武がこれからのことについて疑問を口にしたようだ。

「光姫さん。俺……四海竜王に本当に勝てますか?」
「ええ……必ず……」
 光姫は包帯を巻きながらクスリと微笑んだ。その笑顔を見ると、なんとも、美しい女性であろうか。と、私は思った。恐らくは随一の美貌であろう。だが、武は更に真面目に不安な声音で続けている。
「でも、光姫さん……この際、俺の不安をもっと言わせてもらえば……相手は恐らく四人同時に来るんですよ。タイマンなら中学の頃からしてます……負けたことはないです。でも、今度は多勢に無勢だし……一度に巨大な龍の四人を相手に戦うのは……いくらなんでも……」
 あの武が自信がないとは。
 けれども、私は勝敗はタケルの勝ちと踏んでいた。
 光姫もニッコリと微笑んだ。
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登場人物紹介

山門 武。

麻生の幼馴染で文武両道だが、どこかしら抜けている。

「俺、変わらないから。そう……いつまでも……」

麻生 弥生。

武の幼馴染で学園トップの美少女。

「私は武と誰もいないところへ行きたい……例え、日本を捨てても……」

高取 里奈。

タロットカード占いが大人顔負けの的中率の不思議な女。

「明後日には辿り着いているわ。その存在しないはずの神社に」

武に世界を救うという使命を告げる。

湯築 沙羅。

運動神経抜群で陸上県大会二年連続優勝者。

過去に辛い失恋の経験があるが、二番目の恋は武だった。


鬼姫。

鬼神を祀る巫女。剣術、気、ともに最強。

蓮姫。

海神を祀る巫女。神出鬼没な槍技の使い手。

地姫。

白蛇を祀る巫女。雷や口寄せなど随一の不思議な力を持っている。

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