第65話

文字数 524文字

 ヒュー、ヒュー、ヒュー……。

 急に口笛の鳴り響く教室。
「ええ。この世の誰よりも……」
 地姫はやっとここまできたという顔をしていた。
「今のタケル様なら、四海竜王にも必ず勝てますし。もう安心して大丈夫なんですよ」
 一際、口笛の鳴り響く2年D組で。
 地姫の声音はかなり優しく。それでいて、確信や自信に満ちていた。
「へえー。信じられないけれど、これで世界は救われるんだね」
 小太りの研究員も口笛を吹きながら、空になったコーヒーカップにウイスキーを淹れていた。
 宮本博士と研究員の連日の徹夜は、言うまでもないが、世界を救うためであったが、それが武によって、いとも簡単に叶うのだ。
 これには宮本博士も不思議がっていたが、地姫のことを誰よりも信じたいと思っているのだろう。フーと安堵の息を吐いていた。

 2年D組の廊下には、麻生と卓登が聞き耳を立てていた。
「どう思うんだ。麻生?」
 麻生の顔は何やら複雑であったが、その後で安堵の顔と嬉しさの顔が混ざりつつある顔になった。
「ええ。もう大丈夫よ」
 卓登はしきりに頭を突いた。
「さあ、教室へ戻りましょう。もう、四海竜王も来ないわね」
 麻生は卓登をせっつくと教室へと向かった。
 
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登場人物紹介

山門 武。

麻生の幼馴染で文武両道だが、どこかしら抜けている。

「俺、変わらないから。そう……いつまでも……」

麻生 弥生。

武の幼馴染で学園トップの美少女。

「私は武と誰もいないところへ行きたい……例え、日本を捨てても……」

高取 里奈。

タロットカード占いが大人顔負けの的中率の不思議な女。

「明後日には辿り着いているわ。その存在しないはずの神社に」

武に世界を救うという使命を告げる。

湯築 沙羅。

運動神経抜群で陸上県大会二年連続優勝者。

過去に辛い失恋の経験があるが、二番目の恋は武だった。


鬼姫。

鬼神を祀る巫女。剣術、気、ともに最強。

蓮姫。

海神を祀る巫女。神出鬼没な槍技の使い手。

地姫。

白蛇を祀る巫女。雷や口寄せなど随一の不思議な力を持っている。

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