第14話
文字数 1,076文字
武は幾らか落ち着いてきたようだ。いや、ただ混乱と怪我による疲労でぐったりしているのであろう。武は何気なく木枠から晴れ渡った外を覗いている。外には、海と山に囲まれたこの社に、山には宙に浮かぶ大船が幾つもあり、海の至る所にある紅い橋には、大勢の袴姿の男たちが武芸に精を出していた。
「麻生……」
武は麻生の名を再三呟いていた。
だが、麻生は無事で、武たちの方にはこの先厳しい試練が待っているのだ。
「無事って、さっき言った。みんな私たち以外は学園内にいるから。その方がここよりも遥かに安全なのよ。必ずしっかりと寝ていてね」
「水の脅威は?」
「それは……」
高取は、傷口に新たに包帯を巻いている鬼姫に顔を向ける。その目は何やら鬼姫を観察しているかのようにも思われる。それもそのはず。ここから見ても、鬼姫は武をかなり大事にしてくれているようだ。
「初めまして、私は高取 里奈。この人は同じ学園の同級生の山門 武よ。あの……巫女さん。この世界の大雨を何とかできるのよね? どうかお願いします」
高取は面と向かって深々と頭を下げるが、鬼姫は武の傷をよく確認してから高取にそっぽを向いて、まるで他人事のように冷たく言った。
「竜宮城の乙姫を説得するの。そのために稽古よ。あなたには不思議な力がある。その稽古。それと、武道の稽古も。武ともう一人とあなたは武道の稽古。後の三人は……わからないわ」
あまり、高取とは距離を近づけないようにとしているかのようである。
それと、ここには武と高取と湯築と……美鈴と河田と片岡がいるのだった。
湯築は目を覚ました。
やはり、辺りを見回していた。こんな状況で辺りを気にしないのは、高取だけであろう。布団越しから傍に居座る蓮姫に気が付いたようだ。
「あ、お目覚め?」
「ええ……ここって? どこなのかしら?」
湯築は自慢の足の足首を少し怪我していた。
救命具を付け、海へと落ちる時についたものだ。皆、龍によって、命からがら海に落ちたのだ。
「私は海神を祀る巫女の蓮姫というの。あなたの稽古役よ。みんなこれから稽古」
「みんな?」
「そう、みんな」
湯築は驚いているようだ。
「武はいる? あの後、みんな龍から逃げるために、海に落ちて……」
蓮姫はしっかりと頷いたようだ。
「みんないるわよ。あなたの友達の高取っていう人が率先して、全員助けたようね。彼女は地姫(じき)が稽古をするようね。地姫が稽古役なんて凄い友達よね」
地姫は白蛇を祭る巫女で、この神社で随一の口寄せなどの不思議な力がある巫女なのだ。
「麻生……」
武は麻生の名を再三呟いていた。
だが、麻生は無事で、武たちの方にはこの先厳しい試練が待っているのだ。
「無事って、さっき言った。みんな私たち以外は学園内にいるから。その方がここよりも遥かに安全なのよ。必ずしっかりと寝ていてね」
「水の脅威は?」
「それは……」
高取は、傷口に新たに包帯を巻いている鬼姫に顔を向ける。その目は何やら鬼姫を観察しているかのようにも思われる。それもそのはず。ここから見ても、鬼姫は武をかなり大事にしてくれているようだ。
「初めまして、私は高取 里奈。この人は同じ学園の同級生の山門 武よ。あの……巫女さん。この世界の大雨を何とかできるのよね? どうかお願いします」
高取は面と向かって深々と頭を下げるが、鬼姫は武の傷をよく確認してから高取にそっぽを向いて、まるで他人事のように冷たく言った。
「竜宮城の乙姫を説得するの。そのために稽古よ。あなたには不思議な力がある。その稽古。それと、武道の稽古も。武ともう一人とあなたは武道の稽古。後の三人は……わからないわ」
あまり、高取とは距離を近づけないようにとしているかのようである。
それと、ここには武と高取と湯築と……美鈴と河田と片岡がいるのだった。
湯築は目を覚ました。
やはり、辺りを見回していた。こんな状況で辺りを気にしないのは、高取だけであろう。布団越しから傍に居座る蓮姫に気が付いたようだ。
「あ、お目覚め?」
「ええ……ここって? どこなのかしら?」
湯築は自慢の足の足首を少し怪我していた。
救命具を付け、海へと落ちる時についたものだ。皆、龍によって、命からがら海に落ちたのだ。
「私は海神を祀る巫女の蓮姫というの。あなたの稽古役よ。みんなこれから稽古」
「みんな?」
「そう、みんな」
湯築は驚いているようだ。
「武はいる? あの後、みんな龍から逃げるために、海に落ちて……」
蓮姫はしっかりと頷いたようだ。
「みんないるわよ。あなたの友達の高取っていう人が率先して、全員助けたようね。彼女は地姫(じき)が稽古をするようね。地姫が稽古役なんて凄い友達よね」
地姫は白蛇を祭る巫女で、この神社で随一の口寄せなどの不思議な力がある巫女なのだ。