70.衝突
文字数 1,057文字
慎重に進んだが、あたふたとしてしまう。右も左も前も後ろも悪魔、悪魔、悪魔、悪魔。それぞれが個性的なルックスだが、共通しているのはほとんどが黒い爪だということ。
中には赤やピンクの爪が女に多く見られるので、マニキュアか何かで色をつけているのかもしれない。
羽がある悪魔は、色や長さもばらばらだ。赤や緑の羽。耳も尖っている者とそうでないものがいる。チャスによると一種のファッションだそうだ。
だから長い角や、カラフルな角を持つ悪魔がいたので、これもファッションだと思う。一方、角や羽のない悪魔も多かった。理由は、邪魔だからだそうだ。
実は僕も、こう人が多いと、邪魔だと思っていた。変装を言いだしたチャスもそう思ったらしく、羽を収める。
オルザドークは結局全て元に戻してしまった。自分もあからさまに悪魔の格好でうろつくのは気が引けるので、元に戻した。
羽は、自分の体の一部を動かすように、意志に従って背中に潜んでいく。どうも変な気分だ。爪も短くしようとしたとき、オルザドークに注意された。
「爪はおいておくんだな。いつ何が起こるか分からない」
爪を使えということか? せっかく呪文を覚えたのに、悪魔として戦えと言っているんだろうか? そう思うと、この人と一緒に行動するのが、不快になってくる。
十分ほど歩いていた。今日は魔界の宿を探すそうだ。魔界で活動する以上安全な場所などないのだが、眠る場所くらいは確保しなければ。本当なら今すぐにでもジークのところに行きたいのだが、オルザドークはそうさせてくれない。
「何であんな人間のガキに俺がこけに」
相変わらずの人混みだが、そろそろ慣れてきていた頃だ。ぶつぶつ呟きながら、スキンヘッドの悪魔が怒らせ肩で歩いてきたのは。機嫌が悪そうだし、苛々しているのが目に見える。
明らかに危ない雰囲気だ。絶対にぶつからないようにしなければ。
オルザドークは何も気にせず通り過ぎた。あんな風にやればいいのだ。続いてチャスも何事もなくすれ違う。怖がることではないではないか。しかし、横を意識しすぎたせいか目が合ってしまう。
男は笑っていた。目を合わせる前から。どうしてだろう。初めて合った人にこんな目で見下ろされるのは初めてだ。
自分はとても小さく見られている。身長の差が大きくあると言っても、それが力の差でもあるかのように、目に射られた。
すれ違う寸前、男が低い姿勢で、こちらにも見えるようにニヤリと笑った。肩の骨がぶつかり合う。しまったと思ったときには遅かった。
「どこ見て歩いてんだよ」
中には赤やピンクの爪が女に多く見られるので、マニキュアか何かで色をつけているのかもしれない。
羽がある悪魔は、色や長さもばらばらだ。赤や緑の羽。耳も尖っている者とそうでないものがいる。チャスによると一種のファッションだそうだ。
だから長い角や、カラフルな角を持つ悪魔がいたので、これもファッションだと思う。一方、角や羽のない悪魔も多かった。理由は、邪魔だからだそうだ。
実は僕も、こう人が多いと、邪魔だと思っていた。変装を言いだしたチャスもそう思ったらしく、羽を収める。
オルザドークは結局全て元に戻してしまった。自分もあからさまに悪魔の格好でうろつくのは気が引けるので、元に戻した。
羽は、自分の体の一部を動かすように、意志に従って背中に潜んでいく。どうも変な気分だ。爪も短くしようとしたとき、オルザドークに注意された。
「爪はおいておくんだな。いつ何が起こるか分からない」
爪を使えということか? せっかく呪文を覚えたのに、悪魔として戦えと言っているんだろうか? そう思うと、この人と一緒に行動するのが、不快になってくる。
十分ほど歩いていた。今日は魔界の宿を探すそうだ。魔界で活動する以上安全な場所などないのだが、眠る場所くらいは確保しなければ。本当なら今すぐにでもジークのところに行きたいのだが、オルザドークはそうさせてくれない。
「何であんな人間のガキに俺がこけに」
相変わらずの人混みだが、そろそろ慣れてきていた頃だ。ぶつぶつ呟きながら、スキンヘッドの悪魔が怒らせ肩で歩いてきたのは。機嫌が悪そうだし、苛々しているのが目に見える。
明らかに危ない雰囲気だ。絶対にぶつからないようにしなければ。
オルザドークは何も気にせず通り過ぎた。あんな風にやればいいのだ。続いてチャスも何事もなくすれ違う。怖がることではないではないか。しかし、横を意識しすぎたせいか目が合ってしまう。
男は笑っていた。目を合わせる前から。どうしてだろう。初めて合った人にこんな目で見下ろされるのは初めてだ。
自分はとても小さく見られている。身長の差が大きくあると言っても、それが力の差でもあるかのように、目に射られた。
すれ違う寸前、男が低い姿勢で、こちらにも見えるようにニヤリと笑った。肩の骨がぶつかり合う。しまったと思ったときには遅かった。
「どこ見て歩いてんだよ」