33.紋章のコイン
文字数 1,673文字
鋭い音がする。次に大きな鈍い音。勇気を出して振り返った。樹齢数百年の木が、切り倒されてただの丸太に早変わりしている! 人間はあんなことできない。
やっぱりあれは悪魔だ。と、そのとき前を見ると、グッデが消えていた。霧で見えないのか? それとも自分が迷ったのか。頭の中がごちゃごちゃになってきた。でもやっと視界が晴れた。小さな坂にさしかかった。が、走っていた勢いで、転んで落ちた。
「うわバレ来るな!」
何とグッデがいた。先に落ちていたようだ。
「ごめん、どいて!」
見事に衝突した。もみくちゃになっていると、悪魔の男が勝利を確信して歩いてきた。
「おい、あの薬」グッデが急いで赤い薬を飲んだ。
「え、今飲むの? すぐに効くかな」
「いけるって、おまえも早く飲め」
本当は飲みたくない。悪い夢は薬のせいだと思うのだ。でも、ここで、殺されるわけにはいかない。どうする? 今チャスはいない。そんなに都合よく、悪魔祓い師も通らないだろうし。
仕方なく薬を飲んだ。これで何とかなるといいのだが。でも、効くまでに時間がかかるかもしれないので、時間を稼ぐことにした。
「何で僕達を殺そうとする?」
僕の問いに悪魔の男は笑いながら言った。
「別におまえらだけを狙ってるんじゃない。ちょっと人探しでな。分かんねぇから、かたっぱしから殺しに回ってやってるんだ」
無差別ということに恐怖を感じた。まさに悪魔だ。もう少し話を伸ばそうかと思った。しかし、グッデが自分の靴を投げた。
「食らえ! おれの魔法!」
男はバカにして相手にしなかった。しかしこれが上手くいった。男の腕に当たった靴は、爆発的な力で、岩でも投げたように男に当たって回転させながらふき飛ばした。自分でも驚いたグッデが慣性をあげる。
「すごいグッデ」
しかし喜びも束の間、
「悪魔魔術、背後 」
悪魔魔術だって? グッデの真後ろに男が瞬間移動して現れた。男は爪を上に掲げる。危ない! 走って間に入る。肩が大きく裂けた。でも心配ない。
血は飛び散った後にいつもどおりに集まって戻ってくる。グッデも無傷だ。しかしこのとき、悪魔も驚くだろうと思っていた予想とは裏腹に、男は妙に目を輝かせて笑いだしたのだった。
「見つけた。ついに、ついに! このゲーム、俺の勝ちだ! まさかこんな簡単に、勝った!」
何を言っているのかさっぱりだ。勝った勝ったと、叫び舞い上がっている。でも、こんな油断している敵なら倒せる。魔法を信じて、拳を固めた。
「俺の勝ちだ!」
「おまえの負けだ!」
おもいっきり顔面を殴ったら、何メートルも飛んでいった。男の笑顔が崩れ、樹齢数百年の木にぶつかって気を失った。
「やったぜバレ!」
そう言われると、我ながら今のパンチはかっこよかったかも。
「グッデもすごかったよ」
お互い騒ぎ、ほめ合った。
「おい、無事か?」
心配そうに駆けつけたのはチャスだ。
「そっちの悪魔と魔物は?」
「片づいた。あれ、まさかお前達が?」心を読んだチャスはそう言った。
「うん」
「へーすごいな」
感心してもらえた。四大政師にそう言われると、嬉しい。その後、チャスの家に戻ると、一日ぐらい泊まっていけと言われたが、遠慮しておいた。その方がまたここに戻ってくる理由ができるような気がして、楽しみが一つ増える。
チャスは、僕達の身を案じてコインを何枚も渡してくれる。だが、そんなにもらっては悪い。それに、金色のコインだけに、非常に高価に見えたせいでもある。
「さっきみたいに、誰かに襲われて、危なくなったら相手に投げつけろ。でも、一回しか使えないからな」
コインを見て思い出した。要姫のコインを見せて、同じように使えるか聞いた。
「あー使える。でも、それも一回だけだから、考えて使え」
「ありがとうチャス」
それからチャスの家を出た。チャスには本当のところ、旅についてきてほしいが、大魔術師のシャナンス・ジルドラード・オルザドークを探してくれるらしい。チャスは、町まで見送ってくれた。もう一度お礼を言って、また旅に出発した。
やっぱりあれは悪魔だ。と、そのとき前を見ると、グッデが消えていた。霧で見えないのか? それとも自分が迷ったのか。頭の中がごちゃごちゃになってきた。でもやっと視界が晴れた。小さな坂にさしかかった。が、走っていた勢いで、転んで落ちた。
「うわバレ来るな!」
何とグッデがいた。先に落ちていたようだ。
「ごめん、どいて!」
見事に衝突した。もみくちゃになっていると、悪魔の男が勝利を確信して歩いてきた。
「おい、あの薬」グッデが急いで赤い薬を飲んだ。
「え、今飲むの? すぐに効くかな」
「いけるって、おまえも早く飲め」
本当は飲みたくない。悪い夢は薬のせいだと思うのだ。でも、ここで、殺されるわけにはいかない。どうする? 今チャスはいない。そんなに都合よく、悪魔祓い師も通らないだろうし。
仕方なく薬を飲んだ。これで何とかなるといいのだが。でも、効くまでに時間がかかるかもしれないので、時間を稼ぐことにした。
「何で僕達を殺そうとする?」
僕の問いに悪魔の男は笑いながら言った。
「別におまえらだけを狙ってるんじゃない。ちょっと人探しでな。分かんねぇから、かたっぱしから殺しに回ってやってるんだ」
無差別ということに恐怖を感じた。まさに悪魔だ。もう少し話を伸ばそうかと思った。しかし、グッデが自分の靴を投げた。
「食らえ! おれの魔法!」
男はバカにして相手にしなかった。しかしこれが上手くいった。男の腕に当たった靴は、爆発的な力で、岩でも投げたように男に当たって回転させながらふき飛ばした。自分でも驚いたグッデが慣性をあげる。
「すごいグッデ」
しかし喜びも束の間、
「悪魔魔術、
悪魔魔術だって? グッデの真後ろに男が瞬間移動して現れた。男は爪を上に掲げる。危ない! 走って間に入る。肩が大きく裂けた。でも心配ない。
血は飛び散った後にいつもどおりに集まって戻ってくる。グッデも無傷だ。しかしこのとき、悪魔も驚くだろうと思っていた予想とは裏腹に、男は妙に目を輝かせて笑いだしたのだった。
「見つけた。ついに、ついに! このゲーム、俺の勝ちだ! まさかこんな簡単に、勝った!」
何を言っているのかさっぱりだ。勝った勝ったと、叫び舞い上がっている。でも、こんな油断している敵なら倒せる。魔法を信じて、拳を固めた。
「俺の勝ちだ!」
「おまえの負けだ!」
おもいっきり顔面を殴ったら、何メートルも飛んでいった。男の笑顔が崩れ、樹齢数百年の木にぶつかって気を失った。
「やったぜバレ!」
そう言われると、我ながら今のパンチはかっこよかったかも。
「グッデもすごかったよ」
お互い騒ぎ、ほめ合った。
「おい、無事か?」
心配そうに駆けつけたのはチャスだ。
「そっちの悪魔と魔物は?」
「片づいた。あれ、まさかお前達が?」心を読んだチャスはそう言った。
「うん」
「へーすごいな」
感心してもらえた。四大政師にそう言われると、嬉しい。その後、チャスの家に戻ると、一日ぐらい泊まっていけと言われたが、遠慮しておいた。その方がまたここに戻ってくる理由ができるような気がして、楽しみが一つ増える。
チャスは、僕達の身を案じてコインを何枚も渡してくれる。だが、そんなにもらっては悪い。それに、金色のコインだけに、非常に高価に見えたせいでもある。
「さっきみたいに、誰かに襲われて、危なくなったら相手に投げつけろ。でも、一回しか使えないからな」
コインを見て思い出した。要姫のコインを見せて、同じように使えるか聞いた。
「あー使える。でも、それも一回だけだから、考えて使え」
「ありがとうチャス」
それからチャスの家を出た。チャスには本当のところ、旅についてきてほしいが、大魔術師のシャナンス・ジルドラード・オルザドークを探してくれるらしい。チャスは、町まで見送ってくれた。もう一度お礼を言って、また旅に出発した。