96.ジョーカー
文字数 921文字
こんなトランプを配るためにジークは依頼したのか?」あきれ返るオルザドーク。
両肘をついてバロピエロが語る。
「それは、皆さんのこれから先の運命を決める物です」
くだらないとバカにするオルザドークの横でチャスが明るく振舞った。
「おもしろそうだな。これでバレが圧勝すれば、あいつバレに泣きついて謝るかもな」
「運命なんて決められてたまるか」
噛みついたのでバロピエロが喜ぶだけだった。
「安心して下さい。自分で選んでいいんですから。ただしこのカード、ハズレがないとは言いきれませんがね」
「何それ、聞いてないよ!」反射的に叫んだ。が、それは無意味だった。
「どれかカードを引かない限り、扉は開きません」
静かな声は脅すようにしか聞こえなかった。カードはどれも同じ赤い渦に見える。等間隔に置かれていて、光の照り返しも不思議なことに同じ。
「ハズレがあるかもしれないんだよね?」
どんなハズレがあるか聞き出せないかと念を押すが、教えてくれそうにない。
「いずれにせよ知らない方がいいと思います。全員生きて帰れる保証はないんですから」
そんなことは分かっている。分かっているつもりだ。覚悟は決めてある。オルザドークだけは早く終わらせようと、一番にカードを引く。考えて引く様子もなく右端の束の一番上をつかんだ。表を見る。そのまま無言だ。
「ハートの七」
感じ取ったチャスが真剣な表情でつぶやく。普通のトランプのようだ。何をこんなにびくびくしていたんだろう。いや、待てよ。
「トランプって」
チャスが頷く。
「ジョーカーがハズレだろうな」
お互いに目を見合っていると喉が渇く。
「どっちがはずれでも心配するな。ひょっとしたら二人とも当たらないかもしれない。好きな方を選べ」
「一緒に引こう」
どの束から引こう。全部同じだ。横目でバロピエロを見ると腹が立ってきた。これを引かないと先に進めないなんて。二人でトランプの一番上を引いた。
考えて選ばない方がいいと思ったからだ。もし考えて選んで、チャスがハズレてしまったらと思うと気分が悪い。チャスのカードがずっと気になる。手に汗が出てきてカードが滑りそうだ。幸いカードを滑り落とさずに済んだ。
「ジョーカー」
両肘をついてバロピエロが語る。
「それは、皆さんのこれから先の運命を決める物です」
くだらないとバカにするオルザドークの横でチャスが明るく振舞った。
「おもしろそうだな。これでバレが圧勝すれば、あいつバレに泣きついて謝るかもな」
「運命なんて決められてたまるか」
噛みついたのでバロピエロが喜ぶだけだった。
「安心して下さい。自分で選んでいいんですから。ただしこのカード、ハズレがないとは言いきれませんがね」
「何それ、聞いてないよ!」反射的に叫んだ。が、それは無意味だった。
「どれかカードを引かない限り、扉は開きません」
静かな声は脅すようにしか聞こえなかった。カードはどれも同じ赤い渦に見える。等間隔に置かれていて、光の照り返しも不思議なことに同じ。
「ハズレがあるかもしれないんだよね?」
どんなハズレがあるか聞き出せないかと念を押すが、教えてくれそうにない。
「いずれにせよ知らない方がいいと思います。全員生きて帰れる保証はないんですから」
そんなことは分かっている。分かっているつもりだ。覚悟は決めてある。オルザドークだけは早く終わらせようと、一番にカードを引く。考えて引く様子もなく右端の束の一番上をつかんだ。表を見る。そのまま無言だ。
「ハートの七」
感じ取ったチャスが真剣な表情でつぶやく。普通のトランプのようだ。何をこんなにびくびくしていたんだろう。いや、待てよ。
「トランプって」
チャスが頷く。
「ジョーカーがハズレだろうな」
お互いに目を見合っていると喉が渇く。
「どっちがはずれでも心配するな。ひょっとしたら二人とも当たらないかもしれない。好きな方を選べ」
「一緒に引こう」
どの束から引こう。全部同じだ。横目でバロピエロを見ると腹が立ってきた。これを引かないと先に進めないなんて。二人でトランプの一番上を引いた。
考えて選ばない方がいいと思ったからだ。もし考えて選んで、チャスがハズレてしまったらと思うと気分が悪い。チャスのカードがずっと気になる。手に汗が出てきてカードが滑りそうだ。幸いカードを滑り落とさずに済んだ。
「ジョーカー」