81.悪魔教師
文字数 1,348文字
剣を上から振り下ろす。かぶりが大きすぎた。素早い回し蹴りにあい、吹っ飛んだ。フェイクか。追うふりをして、わざと背を向けたのか。
「悪魔魔術、平行の国境」
茶髪悪魔が間髪入れず、飛び出して拳を床に叩きつけた。砕けた床が二筋の余波を作って迫る。足場からの攻撃だ。体勢を整えながら飛び越える。同時に悪魔達も空中参戦した。
二人同時の蹴り、空中で避けるのは困難だが、できないこともない。剣を振ると、さすがに二人とも左右に別れた。横から二人のパンチと蹴り。
「インスファウス!」
あらゆる近くの物を火柱が焼く。建物にも引火した。男の腕と足も然り。茶髪の男は痛みのあまり、あらん限りの声を上げて床に転がった。
片腕を失くしたスーツの男は、苦い顔をしているが、冷静に着地した。
「人間の子供と遊んでいる場合じゃない。こんなことが知れたらジークが黙っていない」
床に転がっている悪魔も冷静になったらしい。スーツの男の言葉に、本気を出せという意味が伝わったからだ。
「ここはジークって奴が作ったのか?」
スーツの男は不適に微笑んだ。
「そうだがどうするつもりだ? DEOが何なのかも知っているんだろ? 悪魔祓い師が、悪魔の子供を助けるのか?」
「ここを潰すだけだ。ジークもついでに倒す」
今度は茶髪の男が笑い出した。
「無理無理。魔王を敵にするようなもんだ。DEOを潰したところで、何度でも似たような施設は作られる」
思わず冷笑する。簡単なことではないか。
「ジークって奴を倒せば早いな」
(おそらくバレもそこにいる。あいつも因果関係があるはずだ)
今の俺にはそんな気がしてならなかった。
「君にできるのか? 悪魔魔術、変身。黒狼」
黒く焼け焦げ、異臭のする男の腕が、骨そのものが動く音を立てて伸び始めた。生えてきた新しい腕は黒い毛の中にある。その身体も変化していく。骨格がこすり合う鈍い音がする。変形した男は二本足の狼になった。
「狼男か?」
スーツの狼男は、前にかかった長い髪を振り払った。
「そうとも言える。だが、噛みつくだけが能じゃない」
蹴りが繰り出される。靴の底で光っているのは、破れ出た爪だ。天然のスパイクか。そう頭で解釈し、後ろへ飛ぶつもりだった。
「悪魔魔術、金縛りの杭」
後方への体重移動が途切れた。通常では立っていられないような角度で、体が前にも後ろにもいかなくなった。
「しまった!」
蹴りが胸をえぐる。意識が揺らぐ。思ったより深く入った。
「やれやれ。これで終わりのようだな」
スーツの狼悪魔がきびすを返した。
「待てよ。まだ俺は死んじゃいないぞ」
「今はまだというだけ。でしょ?」
確かに体が動かない。剣を使っての呪文もままならないだろう。足元を血が濡らしている。結構な量だ。しかし動いている物は流れ落ちる血だけだ。
「エーベスサンペース!」
剣が赤く血の色に輝く。
「呪文だと!」
茶髪悪魔の喉を赤い亀裂が走った。粉々に砕ける。黒い血が肉片と一緒に飛び散った。
「血を媒体にしたのか!」
狼の方は粉々になるとともに、毛も散乱した。
静かになった部屋は、炎に飲まれていった。建物の外に出た頃には学校は火の海だ。
「お兄ちゃん」
遠くで声が聞こえる。手を振る影が見えたとき、意識を失った。
「悪魔魔術、平行の国境」
茶髪悪魔が間髪入れず、飛び出して拳を床に叩きつけた。砕けた床が二筋の余波を作って迫る。足場からの攻撃だ。体勢を整えながら飛び越える。同時に悪魔達も空中参戦した。
二人同時の蹴り、空中で避けるのは困難だが、できないこともない。剣を振ると、さすがに二人とも左右に別れた。横から二人のパンチと蹴り。
「インスファウス!」
あらゆる近くの物を火柱が焼く。建物にも引火した。男の腕と足も然り。茶髪の男は痛みのあまり、あらん限りの声を上げて床に転がった。
片腕を失くしたスーツの男は、苦い顔をしているが、冷静に着地した。
「人間の子供と遊んでいる場合じゃない。こんなことが知れたらジークが黙っていない」
床に転がっている悪魔も冷静になったらしい。スーツの男の言葉に、本気を出せという意味が伝わったからだ。
「ここはジークって奴が作ったのか?」
スーツの男は不適に微笑んだ。
「そうだがどうするつもりだ? DEOが何なのかも知っているんだろ? 悪魔祓い師が、悪魔の子供を助けるのか?」
「ここを潰すだけだ。ジークもついでに倒す」
今度は茶髪の男が笑い出した。
「無理無理。魔王を敵にするようなもんだ。DEOを潰したところで、何度でも似たような施設は作られる」
思わず冷笑する。簡単なことではないか。
「ジークって奴を倒せば早いな」
(おそらくバレもそこにいる。あいつも因果関係があるはずだ)
今の俺にはそんな気がしてならなかった。
「君にできるのか? 悪魔魔術、変身。黒狼」
黒く焼け焦げ、異臭のする男の腕が、骨そのものが動く音を立てて伸び始めた。生えてきた新しい腕は黒い毛の中にある。その身体も変化していく。骨格がこすり合う鈍い音がする。変形した男は二本足の狼になった。
「狼男か?」
スーツの狼男は、前にかかった長い髪を振り払った。
「そうとも言える。だが、噛みつくだけが能じゃない」
蹴りが繰り出される。靴の底で光っているのは、破れ出た爪だ。天然のスパイクか。そう頭で解釈し、後ろへ飛ぶつもりだった。
「悪魔魔術、金縛りの杭」
後方への体重移動が途切れた。通常では立っていられないような角度で、体が前にも後ろにもいかなくなった。
「しまった!」
蹴りが胸をえぐる。意識が揺らぐ。思ったより深く入った。
「やれやれ。これで終わりのようだな」
スーツの狼悪魔がきびすを返した。
「待てよ。まだ俺は死んじゃいないぞ」
「今はまだというだけ。でしょ?」
確かに体が動かない。剣を使っての呪文もままならないだろう。足元を血が濡らしている。結構な量だ。しかし動いている物は流れ落ちる血だけだ。
「エーベスサンペース!」
剣が赤く血の色に輝く。
「呪文だと!」
茶髪悪魔の喉を赤い亀裂が走った。粉々に砕ける。黒い血が肉片と一緒に飛び散った。
「血を媒体にしたのか!」
狼の方は粉々になるとともに、毛も散乱した。
静かになった部屋は、炎に飲まれていった。建物の外に出た頃には学校は火の海だ。
「お兄ちゃん」
遠くで声が聞こえる。手を振る影が見えたとき、意識を失った。