37.十字架の剣
文字数 1,092文字
「さあ誰から死ぬ? おい、どこ見てんだ!」
太った男が、僕の眉間に銃をつきつける。冷や汗が流れた。そっと、コインを指から離す。男の足にコインが当たる。
男の悲痛な叫び声。コインは思った以上の威力だ。放電したのだ。男は三秒間ほど、体に電気を帯び、失神して倒れた。どよめきが起こる。レイドさえ驚いたようだ。
「チャンス」
グッデが薬を飲む。続いて僕も飲んだ。グッデが飲むのに、飲まないわけにはいかない。やはり味の方は、無理に甘くした薬といった感じだ。この前みたいに魔法が効くことに期待し、反撃だ!
「や、やれ!」
そう上手くいかなかった。盗賊達が一斉に発砲したのだ。
「邪魔だ!」
銃声より早く飛び出したレイドが、ネックレスを外す。十字架が束の部分に変わって剣に変身した。
剣を一回転させる。白くまばゆい光を放つ剣が、焼けつく閃光を散らす。盗賊達の哀れな悲鳴。手にした銃が掌の上で赤々と燃え上がり、液状化していく。一人の盗賊がいち早く銃を投げ捨て、走って逃げる。
後を追うように十人はいた盗賊は逃げ出してたった一人になった。
「てめー卑怯だぞ!」
銃を早く手放さなかったために、手の皮膚が焼け落ち黒ずんでいる。最後の男が、赤く腫らした瞳で一睨みして逃げて行った。
なんともあっけない。魔法を見たことがない人間は恐れを成すのだろう。つい最近の僕達もあんな腰抜けだったと思う。
しかし、レイドの剣はなんなんだろう。その謎はすぐに解決した。十字架の剣は銀白の光を放ち、レイドの掌に収まる十字架のネックレスになった。やはり見間違いではなかった。
「じろじろ見るな」レイドが冷たく言い放つ。
「その剣も魔法で?」
「聖剣カオス。悪魔を裁く意志を持つ剣だ」
改めて見ると神々しい輝きのある十字架だ。レイドの魔法には感服させられる。
レイドが手をぱんぱんと払って「片づいた」と満足気に言って踵を返した。
そのとき不自然なものが見えた。周りには、揺らめく木々しかないはずなのに、ぬかるみがひとりでに水を跳ね上げた。背後をすり抜ける微風。それに気づいたレイドが振り返る。
「っう」
鈍い鈍器で殴られたような音、レイドが膝を折り倒れる。落ち葉が舞い上がる。何が起きたのか検討もつかない。レイドが殴られた? 盗賊達はみな、逃げてしまった。それどころか僕達以外に人は見当たらない。
「まさかガキに腰を抜かすとは、おれの出番か」
音もなく、再び背後を風が通る。今度はグッデが叫んだ。足にナイフが突き刺さっている。
「グッデ!」
「おっと待ちな」
信じられないものが現われた。目と鼻の先で、ナイフが宙に浮いている。
太った男が、僕の眉間に銃をつきつける。冷や汗が流れた。そっと、コインを指から離す。男の足にコインが当たる。
男の悲痛な叫び声。コインは思った以上の威力だ。放電したのだ。男は三秒間ほど、体に電気を帯び、失神して倒れた。どよめきが起こる。レイドさえ驚いたようだ。
「チャンス」
グッデが薬を飲む。続いて僕も飲んだ。グッデが飲むのに、飲まないわけにはいかない。やはり味の方は、無理に甘くした薬といった感じだ。この前みたいに魔法が効くことに期待し、反撃だ!
「や、やれ!」
そう上手くいかなかった。盗賊達が一斉に発砲したのだ。
「邪魔だ!」
銃声より早く飛び出したレイドが、ネックレスを外す。十字架が束の部分に変わって剣に変身した。
剣を一回転させる。白くまばゆい光を放つ剣が、焼けつく閃光を散らす。盗賊達の哀れな悲鳴。手にした銃が掌の上で赤々と燃え上がり、液状化していく。一人の盗賊がいち早く銃を投げ捨て、走って逃げる。
後を追うように十人はいた盗賊は逃げ出してたった一人になった。
「てめー卑怯だぞ!」
銃を早く手放さなかったために、手の皮膚が焼け落ち黒ずんでいる。最後の男が、赤く腫らした瞳で一睨みして逃げて行った。
なんともあっけない。魔法を見たことがない人間は恐れを成すのだろう。つい最近の僕達もあんな腰抜けだったと思う。
しかし、レイドの剣はなんなんだろう。その謎はすぐに解決した。十字架の剣は銀白の光を放ち、レイドの掌に収まる十字架のネックレスになった。やはり見間違いではなかった。
「じろじろ見るな」レイドが冷たく言い放つ。
「その剣も魔法で?」
「聖剣カオス。悪魔を裁く意志を持つ剣だ」
改めて見ると神々しい輝きのある十字架だ。レイドの魔法には感服させられる。
レイドが手をぱんぱんと払って「片づいた」と満足気に言って踵を返した。
そのとき不自然なものが見えた。周りには、揺らめく木々しかないはずなのに、ぬかるみがひとりでに水を跳ね上げた。背後をすり抜ける微風。それに気づいたレイドが振り返る。
「っう」
鈍い鈍器で殴られたような音、レイドが膝を折り倒れる。落ち葉が舞い上がる。何が起きたのか検討もつかない。レイドが殴られた? 盗賊達はみな、逃げてしまった。それどころか僕達以外に人は見当たらない。
「まさかガキに腰を抜かすとは、おれの出番か」
音もなく、再び背後を風が通る。今度はグッデが叫んだ。足にナイフが突き刺さっている。
「グッデ!」
「おっと待ちな」
信じられないものが現われた。目と鼻の先で、ナイフが宙に浮いている。