71.退散
文字数 778文字
スキンヘッドの男の顔を見る前に、左頬に痛みを感じた。それ以外何が起きたのかさっぱり分からなかった。周りの風景が自分を追い越していく。背中が誰かにぶつかって転んだときに分かった。スキンヘッドの男に殴られた。
スキンヘッドの男が声を上げて笑っている。その体から黒いオーラが現れている。嫌なものを感じる。これが悪魔の魔力であるイーヴルなのか。何となく確信がある。でなければこんなに、頬が痛むはずがない。
「殴ったな」
そう罵ったら、今度は後ろから捕まれた。偶然背中に当たった男だ。黄緑色の整った髪の男。優しそうな顔。
だが、その目は冷ややかに怒っている。こいつは、どこかで見たような。思い出した。図書館で見かけた最初の悪魔だ。こんなところで出会うとは。
「ぶつかったんだから。謝ってよ」
まずいことに二人の男に絡まれてしまった。チャスがいち早く気づいてくれて助かった。
「おいおい。そうむきになるなよ」
スキンヘッドの男は、ああ? と怪訝そうな顔をした。
「そいつは俺の獲物だぜ」
黄緑髪の男は冷笑する。だが、目は笑っていない。
「僕にぶつかってきたんだから。僕の獲物だ」
チャスは慌てて仲介する。
「ちょっと待てよ。ぶつかったのは悪かった。でもそう怒ることないだろ?」
黄緑色の髪の男はチャスを睨んだ。
「お前誰に物を聞いてるか分かってるのか?」
「それはこっちの台詞だぜ」
今度はスキンヘッドだ。いつの間にか街は野次馬で溢れ返っていた。これでは、逃げるに逃げられない。
「悪いが、こいつは俺の獲物だ」
新たに名乗りを上げたのは、何とオルザドークだ。しかもまた悪魔の格好をしている。演技は上手かった。
オルザドークは人差し指で、素早く空間に円を描いた。すると黒煙が立ち込めて、姿を隠してくれた。騒いでいた野次馬達も煙にむせている。これならすんなり逃げられる。
スキンヘッドの男が声を上げて笑っている。その体から黒いオーラが現れている。嫌なものを感じる。これが悪魔の魔力であるイーヴルなのか。何となく確信がある。でなければこんなに、頬が痛むはずがない。
「殴ったな」
そう罵ったら、今度は後ろから捕まれた。偶然背中に当たった男だ。黄緑色の整った髪の男。優しそうな顔。
だが、その目は冷ややかに怒っている。こいつは、どこかで見たような。思い出した。図書館で見かけた最初の悪魔だ。こんなところで出会うとは。
「ぶつかったんだから。謝ってよ」
まずいことに二人の男に絡まれてしまった。チャスがいち早く気づいてくれて助かった。
「おいおい。そうむきになるなよ」
スキンヘッドの男は、ああ? と怪訝そうな顔をした。
「そいつは俺の獲物だぜ」
黄緑髪の男は冷笑する。だが、目は笑っていない。
「僕にぶつかってきたんだから。僕の獲物だ」
チャスは慌てて仲介する。
「ちょっと待てよ。ぶつかったのは悪かった。でもそう怒ることないだろ?」
黄緑色の髪の男はチャスを睨んだ。
「お前誰に物を聞いてるか分かってるのか?」
「それはこっちの台詞だぜ」
今度はスキンヘッドだ。いつの間にか街は野次馬で溢れ返っていた。これでは、逃げるに逃げられない。
「悪いが、こいつは俺の獲物だ」
新たに名乗りを上げたのは、何とオルザドークだ。しかもまた悪魔の格好をしている。演技は上手かった。
オルザドークは人差し指で、素早く空間に円を描いた。すると黒煙が立ち込めて、姿を隠してくれた。騒いでいた野次馬達も煙にむせている。これならすんなり逃げられる。