87.再会
文字数 1,045文字
雷が鳴り続けている。情けないことに途中で見つけた倉庫に隠れるのが精一杯で、まだリデルの小屋にはほど遠い。追っ手をまくのに魔力を使ったのでうたた寝していた。
雷を除いて、外は異様な静けさに満ちていた。こうして立っているとバカらしい。ジークにたどり着くこともできず、逃げているだけだ。オルザドークに言われた通り、ライブまで待てばよかった。
いや、何としてでも逃げ切る。最初の大群から悪魔達は喧嘩して今や散り散りになっている。窓から外へ出て、屋根伝いに歩く。空には悪魔が見当たらない。下に飛び降りて、壁伝いに歩いても、悪魔には出くわさなくなった。
それでも、ときどき後ろを振り返っていたが、町のネオンが点滅する以外、動きがない。思い切って大通りに出てみた。
やはり誰もいない。さっきまで追われていたことが嘘のようだ。ゲームが終了するとはとても思えない。
足音がした。すばやく壁に身を潜めた。だんだん近づいている。また悪魔か。違う。誰よりもよく知る人物だ。頭を殴られた感覚に見舞われめまいがする。
「グッデ」
口をついて出た。これは夢か? 今大通りを歩いている。死んだはずのグッデが!
喜びでも悲しみでも恐怖でもないものが駆け巡っていく。
(どうして?)
驚きと戸惑いだけだ。他の全てのものが空虚する。少なくとも、グッデしか見えない。これは幻なのか? 夢の中なのか?
だが、あの金髪は見間違いようがない。しかし、あの時グッデは死んだ。あの時のことはよく覚えている。忘れようがない。
振り向きもせずグッデは歩いていく。走っているように見えないのだが、どうしても追いつけない。
まさか魔力が切れて疲れて見える夢か幻か? ひょっとするとグッデは幽霊なのかもしれない。どれにしても確かめたい。謝りたい。
きちんと伝えたい。過ち、罪を。
グッデは路地裏へ進む。ぐねぐねと角をいくつも曲がっていく。
「待ってくれ!」
見失った。行き止まりだ。グッデの姿はない。
ここまできて幻だったのか。高い壁が行く手を阻んでいる。グッデが越えられる高さではない。空を見上げた。赤い月が昇ろうとしている。
黒い蝶だ。グッデは蝶になってしまったのか? バカげた考えを起こしているせいか、身体がだるい。
「悪魔魔術、カラスアゲハ」
何だ? 本当に疲れて眠気に襲われた。蝶の輪郭がかすんで見える。
「お休みコステット」
女の悪魔に声をかけられた。でも、きっと夢の中なんだろう、これは。まぶたを閉じてもグッデは僕の瞳から消えなかった。
雷を除いて、外は異様な静けさに満ちていた。こうして立っているとバカらしい。ジークにたどり着くこともできず、逃げているだけだ。オルザドークに言われた通り、ライブまで待てばよかった。
いや、何としてでも逃げ切る。最初の大群から悪魔達は喧嘩して今や散り散りになっている。窓から外へ出て、屋根伝いに歩く。空には悪魔が見当たらない。下に飛び降りて、壁伝いに歩いても、悪魔には出くわさなくなった。
それでも、ときどき後ろを振り返っていたが、町のネオンが点滅する以外、動きがない。思い切って大通りに出てみた。
やはり誰もいない。さっきまで追われていたことが嘘のようだ。ゲームが終了するとはとても思えない。
足音がした。すばやく壁に身を潜めた。だんだん近づいている。また悪魔か。違う。誰よりもよく知る人物だ。頭を殴られた感覚に見舞われめまいがする。
「グッデ」
口をついて出た。これは夢か? 今大通りを歩いている。死んだはずのグッデが!
喜びでも悲しみでも恐怖でもないものが駆け巡っていく。
(どうして?)
驚きと戸惑いだけだ。他の全てのものが空虚する。少なくとも、グッデしか見えない。これは幻なのか? 夢の中なのか?
だが、あの金髪は見間違いようがない。しかし、あの時グッデは死んだ。あの時のことはよく覚えている。忘れようがない。
振り向きもせずグッデは歩いていく。走っているように見えないのだが、どうしても追いつけない。
まさか魔力が切れて疲れて見える夢か幻か? ひょっとするとグッデは幽霊なのかもしれない。どれにしても確かめたい。謝りたい。
きちんと伝えたい。過ち、罪を。
グッデは路地裏へ進む。ぐねぐねと角をいくつも曲がっていく。
「待ってくれ!」
見失った。行き止まりだ。グッデの姿はない。
ここまできて幻だったのか。高い壁が行く手を阻んでいる。グッデが越えられる高さではない。空を見上げた。赤い月が昇ろうとしている。
黒い蝶だ。グッデは蝶になってしまったのか? バカげた考えを起こしているせいか、身体がだるい。
「悪魔魔術、カラスアゲハ」
何だ? 本当に疲れて眠気に襲われた。蝶の輪郭がかすんで見える。
「お休みコステット」
女の悪魔に声をかけられた。でも、きっと夢の中なんだろう、これは。まぶたを閉じてもグッデは僕の瞳から消えなかった。