130.悪夢

文字数 521文字

 「嘘だ! こいつはグッデなんかじゃない! まやかしだ!」


 全身で抵抗する。グッデはいつもの悪夢でしかない。早く消えてくれ! 


 そう願って暴れても、グッデは消えるどころか、僕の腕を掴む手に力を加えるだけ。おまけにジークに顎をつかまれた。


 持ち上げられて、見下げた視線と、向き合うことになる。怪しげな瞳に灯った光が自信を放っている。



 「認めたくないだけだろ?」



 胸に稲妻のような痛みが走る。ここまでジークが本物と言い張るからには、必ず何かある。


 最悪のシナリオが浮かぶ。それがはっきりと形になる前に全否定するしかない。

 「グッデは偽者だ! こいつは違う!」


 だが、ジークの甘い声には及ばない。顎から首に爪を忍ばせて来た。

 「この状況を認めたくない。だから現実から目を逸らす。そうだろ?」

 「黙れこの嘘つき!」


 嘘をついているのは自分なのかジークなのか分からない。でも否定し続けた。最悪のシナリオを恐れて、そう願ったのかもしれない。


 いつしか、さっき吐いた血の残りが口元を伝って流れ落ちている。さっきの痛みも消えないうちに、さらに深く、身をえぐるような言葉が返ってきた。





 「お前は認められないんだ。グッデが悪魔として生き、オレの手下だってことが」
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