103.負傷
文字数 1,376文字
果敢にもオルザドークが走り出した。考えている暇があれば行動しろと言っているようだ。敵を恐れない強い人だと今さらのように思い知った。
援護をしないと。ゾンビを押し倒し、邪魔する奴は切り倒す。その間、着々とキースに接近するオルザドーク。その距離ニメートル。この人ならいける!
「いいのかな? コステットから離れちゃってさ」
キースが怪しく笑ったのにはわけがある。背後の音に振り向くと、鉄の網が覆いかぶさってきた。まさか庭の噴水から罠が飛び出すとは思わなかった。さすがのオルザドークも残り一メートルと距離を残して立ち止まる。
重さで前に押し倒された。全身すりむいたが、足だけは引っ張りたくない。すぐに立とうとしてもゾンビが一度に何人も乗りかかってくる。爪で抵抗を試みるが、痛みを感じない相手はひるまない。それどころか、爪を伸ばせば、返って網に絡まるだけだ。
疾風のごとく助けにきたのはオルザドークだ。喜ぶべきことだが、このときばかりは素直に喜べない。背後では赤い月の不気味な光を受けて輝く、銃が狙っていたからだ。
立て続けに銃声が鳴った。同時に金属同士がぶつかる甲高い音。後ろも向かず、オルザドークは杖で発砲された弾を防いだ! そのまま突っ走ってくる。
「さすが大魔術師。魔法を使わないでも十分ってことか。でも俺だってそんなに甘くないから。悪魔魔術、ラインアップ」
弾かれた弾丸はそれで終わらなかった。地面に落ちる寸前、反発する磁石のように飛び上がる。
「しつこいな」
背後のそれらを杖で的確にさばいていく。しかし、何度もはね返る弾に、あのオルザドークが押されている。確実に体力が消耗されていく。苦戦するオルザドークを助けに行きたい。
ゾンビさえいなければ。網が邪魔で反撃できない。魔法を使うしかないが、ジークにたどり着くまでは控えておきたい。一度に何度も使うと疲れて、眠気に襲われるからだ。でも、そうも言っていられない。
「リエステスファウス!」
高温で焼き払えば、鉄の網も溶けるだろう。しかし、ゾンビには水の膜でダメージはない。それどころか、上にのしかかるばかりだったのが、殴りかかってきた。
突然の攻撃で、まともに、みぞおちに入り息が詰る。意識はしっかり持っていたが、隙を与えてしまった。足を取られ、引きずっていかれる。それも数人がかりで。
「待ってろ、今行く!」
弾に追われながらオルザドークが走る。
「よそ見しててもいいのかな?」
見物をしていたキースがさらなる銃弾を加えた。ただでも押されているのに、いくらなんでもこれではまずい。
「イルファバニース!」
大爆発の呪文だということは教えてもらっていたのでオルザドークが銃弾を吹き飛ばすべく使ったのが分かった。目がくらむ程の光線と焼けるような熱。焦げ臭い臭いが鼻を突き、視界は黒雲になる。
胸騒ぎがする。煙が晴れてきて、動く者を確かめたときには、背筋が冷たくなる思いがした。静かに上下する肩に、苦しげに吐き出される息。口から滴った赤いものが白いシャツに垂れている。あの赤いシミは? 似合わない光景だ。オルザドークの胸に三つも穴が開いているんだから。
「命中! 本当は十発全部お見舞いしてやるつもりだったのに、さすが大魔術師。爆風で弾の軌道を変えたか」
この人は不死身の一族のはずだ。なのにどうして
援護をしないと。ゾンビを押し倒し、邪魔する奴は切り倒す。その間、着々とキースに接近するオルザドーク。その距離ニメートル。この人ならいける!
「いいのかな? コステットから離れちゃってさ」
キースが怪しく笑ったのにはわけがある。背後の音に振り向くと、鉄の網が覆いかぶさってきた。まさか庭の噴水から罠が飛び出すとは思わなかった。さすがのオルザドークも残り一メートルと距離を残して立ち止まる。
重さで前に押し倒された。全身すりむいたが、足だけは引っ張りたくない。すぐに立とうとしてもゾンビが一度に何人も乗りかかってくる。爪で抵抗を試みるが、痛みを感じない相手はひるまない。それどころか、爪を伸ばせば、返って網に絡まるだけだ。
疾風のごとく助けにきたのはオルザドークだ。喜ぶべきことだが、このときばかりは素直に喜べない。背後では赤い月の不気味な光を受けて輝く、銃が狙っていたからだ。
立て続けに銃声が鳴った。同時に金属同士がぶつかる甲高い音。後ろも向かず、オルザドークは杖で発砲された弾を防いだ! そのまま突っ走ってくる。
「さすが大魔術師。魔法を使わないでも十分ってことか。でも俺だってそんなに甘くないから。悪魔魔術、ラインアップ」
弾かれた弾丸はそれで終わらなかった。地面に落ちる寸前、反発する磁石のように飛び上がる。
「しつこいな」
背後のそれらを杖で的確にさばいていく。しかし、何度もはね返る弾に、あのオルザドークが押されている。確実に体力が消耗されていく。苦戦するオルザドークを助けに行きたい。
ゾンビさえいなければ。網が邪魔で反撃できない。魔法を使うしかないが、ジークにたどり着くまでは控えておきたい。一度に何度も使うと疲れて、眠気に襲われるからだ。でも、そうも言っていられない。
「リエステスファウス!」
高温で焼き払えば、鉄の網も溶けるだろう。しかし、ゾンビには水の膜でダメージはない。それどころか、上にのしかかるばかりだったのが、殴りかかってきた。
突然の攻撃で、まともに、みぞおちに入り息が詰る。意識はしっかり持っていたが、隙を与えてしまった。足を取られ、引きずっていかれる。それも数人がかりで。
「待ってろ、今行く!」
弾に追われながらオルザドークが走る。
「よそ見しててもいいのかな?」
見物をしていたキースがさらなる銃弾を加えた。ただでも押されているのに、いくらなんでもこれではまずい。
「イルファバニース!」
大爆発の呪文だということは教えてもらっていたのでオルザドークが銃弾を吹き飛ばすべく使ったのが分かった。目がくらむ程の光線と焼けるような熱。焦げ臭い臭いが鼻を突き、視界は黒雲になる。
胸騒ぎがする。煙が晴れてきて、動く者を確かめたときには、背筋が冷たくなる思いがした。静かに上下する肩に、苦しげに吐き出される息。口から滴った赤いものが白いシャツに垂れている。あの赤いシミは? 似合わない光景だ。オルザドークの胸に三つも穴が開いているんだから。
「命中! 本当は十発全部お見舞いしてやるつもりだったのに、さすが大魔術師。爆風で弾の軌道を変えたか」
この人は不死身の一族のはずだ。なのにどうして