43.死者の町
文字数 1,170文字
「案内人? この町の?」
たたみかけると、バロピエロは微笑んで答えた。
「私は色々と仕事をしますからね。よく、旅の方に何度も会うんですよ。ところでどうです? この町の第一印象は?」
いぶかしく思って、逆にこっちから聞いた。
「この町が死者の町ってどういうこと?」
すると、バロピエロは出口の方に促した。
「そのために私がいるんじゃないですか。案内しますよ」
その場から動かなかった。この男の微笑みがいつも引っかかる。バロピエロは困った顔をしても微笑んだままだ。
「君達だけだと迷いますよ。この町は広いですし」
「もうこの町を出るからいい」と言ってみた。
「残念ですね」
バロピエロは何か企んでいないだろうか? いつも微笑んでいるからかもしれない、そう思った。これですんなり引き上げるのか? と思っていると、バロピエロはふと、ひらめいたらしく、懐から一枚の紙を出した。
「出口までの地図です。どうぞ」
「帰り道くらい分かるから、いらない」と言えば、「言ったでしょう? この町は広いと」と差し出す。何か初めて会ったときよりも、この人は怪しく思えた。しかしバロピエロも無理強いはしなかった。
「そうですか、バレ君はいらないと? ではこれはグッデ君にもらっていただきましょう」
「え」困惑しながらもグッデは受け取った。
「では私はこれで」
最後にまた微笑んで、家を出て行った。後から続いて、家を出ると、そこにもうバロピエロはいなかった。背筋が寒くなったが、気にせず町を出よう。
「地図、どうする?」
僕はきっぱりと答えた。
「いらないよ。だいたい、一本道だ」
「死者の町ってほんとか? 人もいないけど悪魔もいなかったじゃん」
僕は足を速めた。嫌な感じがする。なぜだろう? 何もなかったことが落ち着かないなんて。
「でも賛成だ。コウモリで驚かされてたら眠れない。野宿の方がましだったかもな」
走りそうなほど早歩きしたが、何かおかしかった。そろそろ町の出口の目印であるアーチに着いてもおかしくないはずなのに、いつまでたってもアーチに着かない。
「ああ!」
ふと地図を見たグッデが叫んだ。
「出口が逆方向だ!」
「そんなはずないよ。まっすぐなんだから」
「だって地図のアーチが動いてるぜ!」
どういうことなのか、グッデの地図をのぞくと分かった。何と地図上で、アーチの絵が町中をあちこち移動している。
「出口が動くなんて」
そればかりでなかった。たった今、目の前を壁が通った。音もなく、地面を滑っていく。そのときになってはじめてやばいと思った。振り替えると、さっき居座っていた家はもうどこかに消えてしまっている。
さっきと町の景色も変わっている。地図と建物の位置を照らし合わせると、一目瞭然だ。
「アーチまで走ろう」
「でも待てよ。また場所が変わったぜ」
たたみかけると、バロピエロは微笑んで答えた。
「私は色々と仕事をしますからね。よく、旅の方に何度も会うんですよ。ところでどうです? この町の第一印象は?」
いぶかしく思って、逆にこっちから聞いた。
「この町が死者の町ってどういうこと?」
すると、バロピエロは出口の方に促した。
「そのために私がいるんじゃないですか。案内しますよ」
その場から動かなかった。この男の微笑みがいつも引っかかる。バロピエロは困った顔をしても微笑んだままだ。
「君達だけだと迷いますよ。この町は広いですし」
「もうこの町を出るからいい」と言ってみた。
「残念ですね」
バロピエロは何か企んでいないだろうか? いつも微笑んでいるからかもしれない、そう思った。これですんなり引き上げるのか? と思っていると、バロピエロはふと、ひらめいたらしく、懐から一枚の紙を出した。
「出口までの地図です。どうぞ」
「帰り道くらい分かるから、いらない」と言えば、「言ったでしょう? この町は広いと」と差し出す。何か初めて会ったときよりも、この人は怪しく思えた。しかしバロピエロも無理強いはしなかった。
「そうですか、バレ君はいらないと? ではこれはグッデ君にもらっていただきましょう」
「え」困惑しながらもグッデは受け取った。
「では私はこれで」
最後にまた微笑んで、家を出て行った。後から続いて、家を出ると、そこにもうバロピエロはいなかった。背筋が寒くなったが、気にせず町を出よう。
「地図、どうする?」
僕はきっぱりと答えた。
「いらないよ。だいたい、一本道だ」
「死者の町ってほんとか? 人もいないけど悪魔もいなかったじゃん」
僕は足を速めた。嫌な感じがする。なぜだろう? 何もなかったことが落ち着かないなんて。
「でも賛成だ。コウモリで驚かされてたら眠れない。野宿の方がましだったかもな」
走りそうなほど早歩きしたが、何かおかしかった。そろそろ町の出口の目印であるアーチに着いてもおかしくないはずなのに、いつまでたってもアーチに着かない。
「ああ!」
ふと地図を見たグッデが叫んだ。
「出口が逆方向だ!」
「そんなはずないよ。まっすぐなんだから」
「だって地図のアーチが動いてるぜ!」
どういうことなのか、グッデの地図をのぞくと分かった。何と地図上で、アーチの絵が町中をあちこち移動している。
「出口が動くなんて」
そればかりでなかった。たった今、目の前を壁が通った。音もなく、地面を滑っていく。そのときになってはじめてやばいと思った。振り替えると、さっき居座っていた家はもうどこかに消えてしまっている。
さっきと町の景色も変わっている。地図と建物の位置を照らし合わせると、一目瞭然だ。
「アーチまで走ろう」
「でも待てよ。また場所が変わったぜ」