第99話

文字数 1,201文字

 魔物はさっきと同じく、斬り掛かってきた。しかも先ほどよりも更に速く。


「何なんだコイツ、復活する度に速くなっていく」


 ギィン!


 パワーも先ほどよりも上がっている。一瞬、押し込まれる。


「じじい、気を付けろ。コイツ何かおかしいぞ」
「ああ、分かっている」


 魔物の剣を流し、斬り付けた。少し浅かったのか、かわされてしまう。


「まだだっ」


 そのまま更に斬り掛かる。


 ギィン!


 魔物は剣撃を剣で受け止めた。


「くっ、全体的に能力が上がっているというのか?」


 こうなると簡単に攻撃できない。どうすれば良いのか。魔物は未だ何も言わずに近寄って来る。元々、喋れないのかもしれない。

 じじいは剣に魔力を溜める。

 魔物は馬鹿の1つ覚えの様に斬り掛かって来る。じじいはそれをかわす事もせず、それより早く斬り掛かった。


「復活出来ないくらい粉々にして消滅させてやる。奥義・光の一撃!」


 光り輝く剣が凄まじい速度で魔物の身体を通る。光は一層激しく輝き、魔物全体を包んだ。そのまま魔物は光の魔力によって消え去ってしまう。


光が収まった時、そこにはじじいだけが残った。


「………」
「………」



 暫く経ったが、魔物は復活しなかった。


「何とか倒したか」
「やれやれ、タフな奴だったな」
「ああ。調子に乗って倒していたら、能力が上がって手が付けられなくなる所だった」


 もし今度見かけたら最初から奥義で消し去る事にしよう。








「……? この感じ。勇者がこの島に来ているのか?」


 何処かの地下で魔王は、洞窟に仕掛けた魔物が消えたのを感じ取った。並みの攻撃では消す事の出来ない魔物。まず間違いなく勇者だろう。


「ふっふっふ。引っかかりおったな」


 時間稼ぎに準備した罠に引っかかったようだ。その洞窟にはあの魔物以外は居なかった。






 じじいは奥の部屋に入る。扉の先には小部屋ほどのスペースがあった。石造りの机のようなものの上に紙が置いてある。


「誰も居ない様だな」
「ハズレだったのか」
「いや、何か置いてある」



 じじいは紙を拾い、裏返した。


「は ず れ」


「……ムカつく」





 じじいはもう1つの洞窟へ向かった。さっきの紙はビリビリに破いて捨ててきた。




「あっちがハズレだったんだ。こっちの洞窟が正解だな」
「そうだろうな」


 中の造りは似たようになっている。暫く行くと広いフロア。奥には扉があり、その前には人型の狼が待ち構えていた。


「ワーウルフって種族だ」
「狼男みたいな感じか?」
「グルルルル。」



 有無を言わさず、魔物は襲い掛かってきた。狼だけあって素早い。


「さっきから、言葉を話さないヤツばっかだな」
「下手な事を喋らない様にしてあるのかもな」
「なるほど」


 魔物は爪で攻撃してきた。先読みでかわしカウンター攻撃を見舞う。


 ギィン!


 もう片方の手の爪で受けられる。さっきのガイコツより反応は良い。


「さっきのよりはやるようだな」
「パワーもありそうだ。気を付けろ」


 じじいは離れて聖剣を構えた。





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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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