第52話

文字数 1,193文字

 まずは今からの試合に集中しなければ。相手は自称勇者。


「本当の勇者である俺が、実力を確かめてやる」


 闘技場ではルーキが待っていた。清潔感のある、好青年ではある。


「それでは第3回戦、第4試合を始めます。レイス選手VSルーキ選手」



「宜しくお願いします。」
「宜しく。自称勇者なんだってな」
「いえ、気に障ったのなら謝ります。周りからそう囃し立てられて調子に乗ってしまっている所はあるかもしれません」
「にしても、職業が勇者ってのはどうなんだ?」


 じじいは聖剣を構える。ルーキもそれに合わせて剣を構えた。



「バトル、スタート!」




「実は僕、他薦なんです」
「大会参加が他薦だったのか?」
「はい。その人が面白半分に職業の欄を勇者にしてしまって……本当は魔法剣士なんです」
「へえ、かわいそうに」

「まさか2年連続で他薦されるとは思っていなかったので。僕としても恐れ多いとは思っているんですが」
「理由は分かったよ」
「では改めて宜しくお願いします」
「ああ。本物の力を見せてやるよ」



 ルーキは剣に魔法を込めた。あの雷属性の魔法剣をやってくるのだろう。じじいの聖剣にも魔力が込められる。ルーキは勢いよく走り出し剣を振るってきた。じじいは正面から受け止める。


 ギィン!


 剣がぶつかり、雷撃が剣を伝いこちらを掠めて来る。少し指先が痺れた。なるほど。これは攻撃を受けたら痺れて動けなくなりそうだな。

 お互いに距離を離し、再度斬り掛かり合う。ルーキの攻撃を先読みでかわし反撃する。ライト斬りを籠手で防御される。この籠手は盾にも出来るヤツなのか?


「やるっ、でも!」


 ルーキは至近距離から魔法を発動してきた。雷の玉が複数飛んでくる。


「サンダー系は弾くのも危ない時があるからな」


 雷のくせに速さはそこまででもない。先読みを併用し、よけながら斬り掛かる。しかしよけられる。


「流石に今のはバレバレか」
「全部よけられるとは思っていなかったですが」


 そう言いながらルーキは斬り掛かってきた。こいつは魔法剣ではないな。聖剣で受け止めながらレイを発動する。



 ドドドドド!


 光の柱が2人を襲う。ルーキには2発被弾。こっちも1発貰っちまった。ルーキが少し怯む。


「今だ、ライト斬り!」


 ルーキは上手く剣で受け止めるも、勢いで剣が弾かれる。じじいは返す刀でもう1度ライト斬りを繰り出した。


 ギィン!


「忘れてた。その籠手があったんだよな」
「危なかったですよ。これが無かったらやられていたかもしれない」


 ルーキは2発目のライト斬りを籠手でガードしていた。しかしやけに硬い籠手だな。衝撃もあまりないように感じる。


「うおおっ!」


 ルーキはじじいを押し飛ばすと、気合を入れた。


「あまり時間を掛ける訳にもいきません。これで終わりです、サンダーソード!」


 ルーキは少し飛び上がり斬り掛かってくる。剣に凄い魔力が宿り、電撃が迸る。じじいは迫って来る攻撃を見つめていた。




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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