第74話

文字数 1,616文字

 ついに世界大会が始まった。部屋にあるテレビを見る。



「1回戦第1試合。武闘家・金銀銅選手VS剣士・キッチャイナ選手」


「うわ、どっちも酷い名前じゃないか。どっちにろネタ枠なのか?」
「いやいや、流石に世界大会まできてそれは無いだろ」
「メタんじゃねえって!」


「宜しく頼む」
「こっちこそ!」



「バトル、スタート!」



 開始の合図と共に2人は走り出した。キッチャイナの武器はロングソードだ。金銀銅は右手に金属の手甲をはめており、左手には腕に小さな丸い盆のような物を付けている。


「あの盆はなんだ?」
「あれはミニバックラーですね。ピンポイントで受け止めて攻撃を流す為の小さな盾です」
「まあ武闘家といえど、剣を手で受け止める訳にはいかないからな」


 キッチャイナの剣撃を盆、いやバックラーで上手く捌いていく。


「流石に上手いな」
「確かに……」


 キッチャイナも金銀銅の攻撃をガードしていく。


「これは、どちらが勝つか分かりませんね」
「そうだな、今の所二人に決定的な差は……あっ!」



 金銀銅の回し蹴りがキッチャイナに直撃し、距離が離れる。そのまま金銀銅は連打を浴びせる。あらゆる距離からの強烈な連撃。キッチャイナは最後のパンチを受けて倒れた。


「それまで。金銀銅選手の勝利です」



「あの連打は貰いたくないな」
「あれだけやられると、何が何だか分からなくなりそうですね」
「なに、やられる前にやっちまえば良いだけだって」
「そうだな。スピード自体は手に負えない程じゃねえ」


「レイス選手、まもなく出番です」
「分かった」


「じいさん、刺華は見た目通りの刀使いだ。意外とパワーがあるから気を付けろ」
「任せておけ」





「1回戦第2試合。侍・刺華選手VS魔法剣士・レイス選手」



「じいさんよ。アンタ、あのヘンリーに勝ったんだってな」
「ほう、知っているのか?」
「一応、下調べくらいはしてるぜ」
「じゃあ俺に勝てないのも分かるだろ」
「そりゃやらなきゃ分からないぜ」


「バトル、スタート!」



 刺華は刀を振ってきた。それを聖剣で受け止めてみる。


 ギィン!


 確かに力が強めか。通常攻撃であれなら、全力で攻撃された場合はよけた方が良いかもしれない。



 刺華の刀を弾き、剣撃を行う。それをかわし、刺華はまた攻撃してくる。ほぼ垂直の斬り。先読みでそれをギリギリかわすが、その直後に刀を回し薙ぎ払いをしてくる。


「くっ、クロス斬りみたいなものか」


 聖剣でガードする。スピード重視らしく、1撃目よりパワーは少ない。



「やっぱ、ただのじいさんじゃ無いな」
「そりゃどうも。」


 じじいはレイを発動した。


 ドドドドド!


 光の柱が刺華を襲う。ガードの上から次々ヒットする。


「ぐ、このじじい!」


 刺華は刀を両手で持ち、袈裟斬りを放ってきた。今までよりスピードがありながらも、見るからに威力のありそうな一撃。


ギイィン!


 じじいはライト斬りで受け止め、そのまま押し返した。刺華は勢いに負け、後ろへ下がる。


「な、何てじじいだ。この俺が押し負けるなんて」
「なかなか良い攻撃だが、それだけだな」

「ああ、そうかよ。じゃあこれを食らって逝きな」


 刺華は気を溜め始める。どうやら、とっておきを見せてくれるらしい。実際に単純なパワーでは刺華の方が分がある。直撃されれば非常に危険だろう。

……塔でのゴーレム戦を思い出す。



「うおおっ!」


 刺華はこっちに飛び掛かる。さっきの袈裟斬りを大げさにした様な攻撃だ。じじいは先読みでかわし、カウンターで攻撃を放った。


「ソードレイン!」


 ギン! ギィン!
 ズシャ! ズシャッ!


 とっさにガードしようとした刺華だったが間に合わず、無数の剣閃が襲う。


「うわああっ!」


 血飛沫が舞い、刺華は吹っ飛んだ。





「それまで。レイス選手の勝利です」


 歓声が沸き起こる。


「何だかんだ攻守のバランスが取れている選手だった。でもそれだけだったな」


 そう言えば魔法を使ってこなかったが、使えないのか?



 そう思いながらじじいは部屋に戻って行った。




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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