第73話
文字数 1,477文字
「はい、レイスさんですね。こちらにサインを……」
「サイン? 俺のファンか?」
「はい?」
被せ作戦は効果が無かったようだ。
「なに、毎回その件やってんの?」
「そう言えば前回も……これは毎回やってますね?」
「放っておいてくれ」
くじの結果は4番。何となく不吉な番号だ。日本であるなら。
「さて、後はケーオってのが何番になるかだな」
ドーンとヘンリーの間に入って、ニャン太が喋ってもだれが喋っているか分からないだろう作戦だ。
「もうすぐ組み合わせの結果が出そうですね」
兵士が大きな紙を持ってきた。あれに組み合わせが書いてあるのだろう。前の壁に貼られていく。
「1回戦は……刺華か。何て読むんだこれ?」
「ああ、ありゃシカだな。去年も出てた」
「刺華でシカって読むの? 動物?」
「鹿じゃねえよ!」
「ケーオは14番です。決勝まで当たりませんね」
「うむむ……お約束な展開だな」
「メタんじゃねぇよ!」
「皆さん、おはようございます」
「おっ、ポーンじゃん」
「おはよう、準決勝で当たれるな」
「そうですね。それまでに負けない様に頑張らないと」
ふいに1人の男と目が合った。
冷たい目をしている。一瞬ケーオかもと思ったが、違うだろう。クスリに依存しているヤツにしては、目がしっかりしている。
「ケーオ、ですね」
「いや、ケーオなんかい」
あれがケーオか……佇まいからして強敵だと分かる。あれにクスリやら魔王やらの上乗せがあると考えると……
「結構やばいかもな」
「じいさん、あれが刺華だぜ」
ヘンリーの視線の先には侍みたいな奴がいた。目つきが悪く、嫌な感じだ。人を殺すのに躊躇もなさそうだな。
「それではまもなく大会を始めます。選手と付き添いの方のみ奥へお進み下さい。観客の方は両脇の扉から観客席へお進み下さい」
「え、付き添いも一緒に入れんの?」
「そうだぜ。まあ付き添いを連れて来るヤツなんて、ほんの一握りだろうけどな」
確かに、付き添いがあるのは数える位だった。傍から見たらじじいの介護の方、って見えるかもしれない。
奥の控室は広めの廊下に部屋がいくつも付いている感じだった。更に奥へ行くと闘技場への階段がある。扉にはドアに番号が振られていた。くじの番号だろう。
部屋はまあまあな広さで、机や椅子が置いてあった。段の上がった畳のスペースは昼寝用なんだろうか? 盗難防止用の金庫もあるし、衣装を整える為の鏡も用意されていた。
「見ろニャン太。HP回復薬とMP回復薬が両方瓶ごと置いてあるぜ」
「これは支給品だから、全部使っても持って帰ってもOKだ」
「すげえな……幾らするんだ? 猫缶幾つ分だ?」
「大怪我は無理ですけど、ちょっとした怪我なんかは問題なく治せますね」
コンコン
「まもなくセレモニーが始まります。レイス選手はこちらへどうぞ」
「分かった」
セレモニー? 今まで無かったのに……流石は世界大会。200年前の時にも無かったけど。
観客席は埋め尽くされ、凄まじい歓声が聞こえる。
「それでは選手達に登場して頂きます」
1人1人の紹介に合わせ順番に闘技場へ出て行く。毎回、歓声や拍手が聞こえる。
「続きまして……4番、レイス選手!」
じじいは若干緊張しながら前へ出た。歓声と拍手は続いている。良かった、急に静かになるなんて事もなさそうだ。
「聖剣流という剣術の使い手です。見た目とは裏腹に豪快な戦いっぷりで今までの大会を制してきました。本選大会の時には、選手に擬態した魔物をも打ち倒しております」
どうやら各大会での事が紹介されるらしい。
「続きまして……5番…………」
そうやってセレモニーは無事に進んだ。
「サイン? 俺のファンか?」
「はい?」
被せ作戦は効果が無かったようだ。
「なに、毎回その件やってんの?」
「そう言えば前回も……これは毎回やってますね?」
「放っておいてくれ」
くじの結果は4番。何となく不吉な番号だ。日本であるなら。
「さて、後はケーオってのが何番になるかだな」
ドーンとヘンリーの間に入って、ニャン太が喋ってもだれが喋っているか分からないだろう作戦だ。
「もうすぐ組み合わせの結果が出そうですね」
兵士が大きな紙を持ってきた。あれに組み合わせが書いてあるのだろう。前の壁に貼られていく。
「1回戦は……刺華か。何て読むんだこれ?」
「ああ、ありゃシカだな。去年も出てた」
「刺華でシカって読むの? 動物?」
「鹿じゃねえよ!」
「ケーオは14番です。決勝まで当たりませんね」
「うむむ……お約束な展開だな」
「メタんじゃねぇよ!」
「皆さん、おはようございます」
「おっ、ポーンじゃん」
「おはよう、準決勝で当たれるな」
「そうですね。それまでに負けない様に頑張らないと」
ふいに1人の男と目が合った。
冷たい目をしている。一瞬ケーオかもと思ったが、違うだろう。クスリに依存しているヤツにしては、目がしっかりしている。
「ケーオ、ですね」
「いや、ケーオなんかい」
あれがケーオか……佇まいからして強敵だと分かる。あれにクスリやら魔王やらの上乗せがあると考えると……
「結構やばいかもな」
「じいさん、あれが刺華だぜ」
ヘンリーの視線の先には侍みたいな奴がいた。目つきが悪く、嫌な感じだ。人を殺すのに躊躇もなさそうだな。
「それではまもなく大会を始めます。選手と付き添いの方のみ奥へお進み下さい。観客の方は両脇の扉から観客席へお進み下さい」
「え、付き添いも一緒に入れんの?」
「そうだぜ。まあ付き添いを連れて来るヤツなんて、ほんの一握りだろうけどな」
確かに、付き添いがあるのは数える位だった。傍から見たらじじいの介護の方、って見えるかもしれない。
奥の控室は広めの廊下に部屋がいくつも付いている感じだった。更に奥へ行くと闘技場への階段がある。扉にはドアに番号が振られていた。くじの番号だろう。
部屋はまあまあな広さで、机や椅子が置いてあった。段の上がった畳のスペースは昼寝用なんだろうか? 盗難防止用の金庫もあるし、衣装を整える為の鏡も用意されていた。
「見ろニャン太。HP回復薬とMP回復薬が両方瓶ごと置いてあるぜ」
「これは支給品だから、全部使っても持って帰ってもOKだ」
「すげえな……幾らするんだ? 猫缶幾つ分だ?」
「大怪我は無理ですけど、ちょっとした怪我なんかは問題なく治せますね」
コンコン
「まもなくセレモニーが始まります。レイス選手はこちらへどうぞ」
「分かった」
セレモニー? 今まで無かったのに……流石は世界大会。200年前の時にも無かったけど。
観客席は埋め尽くされ、凄まじい歓声が聞こえる。
「それでは選手達に登場して頂きます」
1人1人の紹介に合わせ順番に闘技場へ出て行く。毎回、歓声や拍手が聞こえる。
「続きまして……4番、レイス選手!」
じじいは若干緊張しながら前へ出た。歓声と拍手は続いている。良かった、急に静かになるなんて事もなさそうだ。
「聖剣流という剣術の使い手です。見た目とは裏腹に豪快な戦いっぷりで今までの大会を制してきました。本選大会の時には、選手に擬態した魔物をも打ち倒しております」
どうやら各大会での事が紹介されるらしい。
「続きまして……5番…………」
そうやってセレモニーは無事に進んだ。