第９５話

　ここから話は急転する。





　ふにゃにゃん騒動より数日後。光の精霊がじじいの家に来る。


「勇者レイス。報告が2点、選択する事が1点あります」
「え、いきなり！？」
「報告ですか？」


「どれから聞きたいですか？」
「え～と……取り敢えず報告を」
「魔王の居場所と聖剣に掛かった呪い、どちらが良いですか？」
「どっちもヤバそうな……」

「魔王の居場所が分かったんですか！？」
「ええ、ではそれから行きましょうか」



「魔王はずっと北の孤島に居ます。先日、特殊な魔力を感じました」
「北の孤島……」
「特殊な魔力ってのは？」

「恐らく魔王の傷は完全には回復していません。魔法陣を作成し、一気に回復を行っているようです」
「どういう事になるんです？」
「つまり、もうバレても良いと踏んだという事でしょう。それ程には回復していると思われます」
「そうか……俺が辿り着くくらいには全回復しているだろう、って事か。」


「もう1つの報告、聖剣に掛かった呪いについてです」
「呪いって……例の宝石の事ですか？」
「能力を上げる代わりに使用時に常時体力が落ちるっての？」

「そうですが……先日ふにゃにゃんが聖剣に触れましたよね。その際にふにゃにゃんの魔力が聖剣に流れ込みました」
「俺やじじいには感知できない魔力の事ですか？」

「そうです。その結果、聖剣に吸収されてるマジックスピネルの力が倍増しています」
「ふにゃにゃんの力ですか？」
「はい。アレは元々魔力の増加を目的としたマジックアイテムです。それにゴーストを組み合わせて、知能を与えたものがふにゃにゃんなのです」

「疲れが増す感じ？」
「普通の者が聖剣を持った場合、すぐに倒れてしまうでしょう」
「え、そんなにヤバくなってるんですか？」

「貴方は不死ですが無敵ではありません。呪いのせいで体力が下がってしまっては戦い切れない可能性があります」
「どうすれば良いんでしょう？」
「回復薬をポケットに入れておくか？」
「戦いの最中に飲めと？」


「それは私が何とかしましょう」
「何か手がおありですか？」
「前回の復活したばかりの魔王とのバトルを思い出して下さい。あの時にも私は貴方に光の力を与えていました」
「あ、やっぱりアレは光の精霊様のお陰だったんですね」


　魔王ビームでダメージを受けた際に、急に光が身体を包んだ事を思い出す。あの光で力が増して、何とか戦えるようになったのだ。



「魔王との戦いで私が直接手を下す事は出来ません」
「そうですね。原則として上位の精霊は地上に干渉は出来ない。条件付きで1部だけ可能、でしたっけ？」
「そうです。原則は上位の精霊は地上で1人だけが干渉できる。人間と魔物のバランスが崩れそうな時に己の属性の魔力を授けられる、というものです」

「魔王が世界を滅ぼそうとした為、光の精霊様が俺に光の魔力を与えて下さった」
「はい。厳密にはこの前の光の力も光属性の魔力なのです。あまり力を授けすぎる事は精霊のマナーに反しますが……」

「でもあれが無かったら、前回で魔王に負けていました」
「そうです。今回も聖剣の呪いが大丈夫なようにして頂けるのであれば、それで大丈夫です」




（ふにゃにゃん……いえ、神。貴方は私がこうすると予見していたのでしょうか？）