第101話

文字数 1,199文字

 井戸の底には横に抜ける扉があり、その奥も道が続いている。


「ちょっとしたダンジョンみたいだな」
「この構造、元々水を溜める機能は無かったみたいだな」
「ラストダンジョンにしては狭いな」
「猫缶食べたい」


 もはや言った者勝ちだった。



 暫くダンジョンを移動して幾つかの扉をくぐる。その次の扉を開けた先…ふいに広間へ出た。




「……! やっとか」
「で、出やがったな」
「……来たのはお前たちの方だろうに」




 緊張感が少ないまま魔王と会ってしまった。魔法陣の中央に座っている魔王。1ヶ月半振りの再開だった。


「魔王ポコポコビッツ! 決着を付けに来てやったぜ!」
「勇者レイス。お前には三度も煮え湯を飲まされている。200年前、封印の洞窟、世界大会」
「安心しろ。今回で終わりだ」
「お前の死を以ってだがな」


 そう言って魔王は何かを呟き始めた。手を翳すと、魔法陣の前に魔物を召喚した。



「ド、ドラゴン!?」


 現れたのは巨大なドラゴンだった。


「RPGお約束モンスター、こんな時に」
「メタんじゃねえって!」
「まずはコイツと戦って貰おうか」
「お前、ずるいな」
「そうだ。正々堂々と戦いやがれ」



 ドラゴンは炎を吐き出してきた。


「うわあっ!」


 聖剣でガードするが、後ろへ大きく吹き飛ばされた。今までのザコとはレベルが違う。ドラゴンは近寄ってきて、巨体とは思えない速さで横に回転する。そのままの勢いで尻尾による薙ぎ払い。先読みで後ろへ移動し回避する。一周した状態で再び炎を吐いてきた。横へ飛びのいてかわす。


「レイ!」


 ドドドドド!


 命中するが、ダメージは少なそうだ。


「あの皮膚、魔法を受け付けないのか?」
「剣も通るのか!?」
「どうだろうか」


 そう言いながらじじいはダッシュして斬り掛かった。


 ガギィン!


 思った以上に硬い。聖剣ですら切れはせずに弾かれた。


「普通の攻撃は効かないか」


 ドラゴンは爪を振るって来た。先読みでかわし距離を取る。聖剣に魔力を込める。



「行くぞ」


 ドラゴンはまた尻尾攻撃を繰り出してきた。それをかわしながら、尻尾に斬り掛かる。


「ライト斬り!」



 ズシャ!


 手応えあり。ドラゴンの尻尾が少し切れて、出血する。残念ながら切断するには至らない。


「効いたぞ、これならいける」
「ああ、このまま……」


 ドラゴンは大きく息を吸い込んだ。


「あ、新しい攻撃か!?」
「ブレス系だ、気を付けろ」



 ドラゴンは先ほどの炎よりも巨大な炎を吐き出した。じじいは横に飛び退いて、炎をかわす。しかしドラゴンは炎を吐き続けながら、顔を横に動かす。炎もその動きと同じく横に移動してきた。



「マジかよ、こいつ」


 じじいはジャンプし、炎を飛び越えた。ドラゴンは爪でじじいを追撃する。


 ギィン!


 聖剣でガードする。バランスが崩れていたのもあり、後ろへ吹っ飛ばされる。


「じじい!」
「大丈夫だ、怪我はしていない」



 大体、こいつの攻撃はこんなものだろうか? なら勝負はこれからだ。





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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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