第54話

文字数 1,324文字

「や、やった。レイスさん、あのルーキを破るなんて」
「ほう、優勝候補の1人であるルーキに勝ったか」
「あ、いえ王様。レイスさんなら勝てると思っていました」





「本当にやりやがった。これは、本当に決勝であたっちまうな!」


 ヘンリーは思わず立ち上がる。ミノタウロスを倒したあの奥義で決めた。


「面白くなってきやがったぜ」





 じじいは魔法陣で部屋に戻ってきた。MPも空になってしまっている。今日の試合は終了。次の試合が日を跨ぐ、というのは幸いであった。


「ルームサービスにMP回復薬があって良かった。流石にちょっと寝るだけじゃ全快はしないからな」


 しかし回復薬でHPは回復しても単純な体力は回復しない。睡眠はしっかりと取らないと。軽く夕食を摂り、シャワーを浴びてベッドへ潜り込んだ。若い身体であったなら、もっと体力もあっただろうに。

 次の相手である忍者を考える。開幕の広範囲魔法攻撃、あれを攻略しないと始まらない。ガードでは無理だろう。不死の能力の為、死にはしない。でも動けなくなったり気絶してしまうと負けになってしまう。

 策はある。なるべく準決勝では見せたく無いんだが……




 そして疲れもあってじじいは眠ってしまった。









 夢を見た。




 家のベッドで寝ている。

 時間は……分からないが外は明るい。

じじい「おーい、ニャン太」

 返事はない。

 1人で何処かへ行くなんて珍しいな。

 剣を持って森へ行く。

 何故かは分からない。

 自然と足が動く。

 森の奥の洞窟へ入る。

 何故か野生の魔物は出現しない。

 夢だからだろうか。

 洞窟の奥には封印がなされている。

 光の精霊によって魔王をこの奥に封印してある。

 言わば2重の封印だな。

 でも……

「入口の封印が空いている」

 若干の岩崩の跡はある。

 初めから何も無かったかのように封印は消えていた。

「まさか……まさか魔王が?」

 奥へ進む。

 細い通路を少し進むと岩で囲まれた部屋に到着する。

 奥からは戦う音のようなものが聞こえてくる。

「誰かいるのか?」

 視界が広がる。

 遥か昔に見た魔王が居た。

 魔王と戦うニャン太が居た。

 魔王の爪とニャン太の爪が激しくぶつかり合う。

「ニャン太!」

「え、じじい!?」

 声を掛けたせいでニャン太の意識がぶれる。

 次の瞬間だった。

 ニャン太の身体は魔王の爪に切り裂かれる。

 ニャン太は岩壁まで吹っ飛んで行った。

 ニャン太へ走り寄る。

 しかしその前に魔王が立ち塞がる。

「魔王ポコポコビッツ! 貴様!」

 聖剣で斬り掛かるが、爪で一蹴されてしまう。

 吹っ飛ぶ。

 魔王は何も言わず近付いてくる。

「くそが!」

 じじいは魔力を溜めて、奥義を発動する。

 いや、したつもりだった。

「な、奥義が発動出来ない」

 目の前に爪を振りかざす魔王が見えた。

 スシャアッ!

 切り裂かれて壁へ打ち付けられる。

 視界が赤く染まる。

 身体が動かせない。

 ニャン太が急に魔王に襲い掛かった。

 体当たりで魔王を吹っ飛ばす。

 ニャン太がこっちに来る。

 ニャン太が真っ赤なのか?

 じじいが血に染まっているのか?

 魔王がこちらへ来て、再び爪を振りかぶる。


「じじい、聞こえるか!? よく聞け! 家にあった……塔の地下で発見したあの宝石を……」




 次の瞬間、意識は途絶えた。




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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