第60話

文字数 1,234文字

 ヘンリーは様子を見ている。恐らく、先読みを警戒しているのだろう。もちろん、先読みという技は知らないだろう。でもじじいの恐ろしい程のギリギリでかわす技術を警戒しているのだ。


「その魔力、ライト斬りってのを狙ってやがるな? 影牙を真っ二つにしたあの魔法剣を」
「まあそうだな。大人しく食らってみるか?」
「勘弁願いたいぜ。魔法剣ガイア!」


 ガイアを撃つヘンリー。予想通り、牽制から入ってきた。隙を作り魔法剣ギガイアを出してくるだろう。じじいはそれを避け、ライトボールを数発撃つ。ヘンリーはまた剣でそれを弾くが、1発被弾し怯んだ。


「今だ!」


 じじいは駆け寄り聖剣を振るう。


「はん! 来ると思っていたぜ!」


 ヘンリーはライト斬りをかわしカウンターでギガイアを放った。攻撃はじじいに直撃し、じじいは吹っ飛ぶ。


「ぐ、狙ってやがったな。ライトボールもワザと1発食らったんだな?」
「ああ、全部狙い通りだ」
「そんな事も出来るんだな。筋肉バカだと思ってたぞ」
「誰が筋肉バカだ」


 じじいはヒールで回復する。


「回復魔法を使えるのは凄いよな。回復させない様に1連で決めないといけないか」
「そう簡単に何発も貰わないぞ」



 2人は又構える。

 今度はじじいがレイを放つ。ヘンリーは全力で前へ走りだし、レイが肩を掠めるのを無視しながらガイアを放った。聖剣でガードするが、勢いに負けてバランスを崩す。そのままヘンリーは剣を振るう。じじいはそれをかわし、カウンターでソードレインを放った。


 ギィン!ガギィン!


 連続で繰り出される剣閃をガードするが、攻撃に押されながら幾つかはヘンリーを掠める。


「何だよ、もしかしてさっきの仕返しか!?」
「いやいや、避けてのカウンターは俺の十八番だよ」


 そのままヘンリーへ駆け寄る。聖剣に魔力を込める。


「……! この魔力の量は、あの技なのか!?」



 じじいの聖剣が一際眩く光り輝く。その光は輝きを増し、速さを増してヘンリーへ襲い掛かる。


「奥義・光の一撃!」
「待ってたぞ、その奥義を! 俺の剣で止めれるか試してみたかった!」


 ヘンリーは剣に魔力を込めて魔法剣ギガイアで対抗する。


 ギイィン!!!


 じじいの奥義はギガイアの魔力をかき消し、ヘンリーの剣を折る。勢いは止まらずヘンリーの身体を深く切り裂き、左腕を斬り飛ばした。ヘンリーは吹っ飛ぶ。


「うあああ!」
「試せて良かったな。満足したか?」

「う、ぐ……こんなバカな」


 じきに意識が無くなるであろうヘンリーは無言で右手をじじいに向けた。




「キル……クラッシュ……!」


 誰も反応出来ない速さの光がじじいに向かって放たれた。そして先読みによってかわされたそれは、壁にぶつかって炸裂した。



「あれを…かわせるのかよ……」
「悪いな。俺はちょっと特別なんだ」
「いや~、やるわ……じじい……」


 出血多量で息を止めたヘンリーを見届け、じじいは腕を上げる。



「それまで。レイス選手の勝利です。今大会優勝者はレイス選手です!」




 今、じじいの優勝が決まったのだ。




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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