第15話

文字数 1,081文字

「それでは地区予選大会。決勝戦を始めます」


 相手の魔法使いと向かい合う。向こうもこれまでの戦いで消費している様だ。待ち時間でどれだけMPが回復しているだろうか。


「左側……見事Aブロックを勝ち抜いてきた魔法使い。強力な炎の魔法で優勝を狙う、モエヨ選手!」
「おじいさん、貴方の戦いは見せて貰ったわ。動きでは勝てないから近付けない様にしてあげる」

「右側……見事Bブロックを勝ち抜いてきた魔法剣士。圧巻の動きで優勝を勝ち取れるか、レイス選手!」
「これで最後の戦いだ。さっさと終わらせて変えるか」

「バトル、スタート!」




 モエヨは杖を振りかざし炎を出す。シミュレーションRPGなら範囲攻撃になりそうな魔法だ。炎は地面にぶつかった後、地を這いじじいを襲う。聖剣を盾にしガードするも、完全には防げない。


「くっ、なかなか強力じゃないか」


 耐えられない程ではないか。そのままモエヨに向かっていく。パッチと違い連発は出来ないのか、動作が遅れる。ギリギリでモエヨの二発目の魔法が発動して、じじいに直撃してしまう。

 炎の風圧で吹き飛ぶ。



「私の炎を食らって倒れないの?」
「一応は魔法剣士なんでね、多少の耐性はあるんだ」


 しかし、大幅に体力は削られてしまった。間を開けずにモエヨは、先ほどより小さな炎を連発で発動。


「連発できるのかよ」


 先読みを発動し魔法をかわしていく。しかし隙をつかめずに、なかなか先に進めない。


「なんて反射神経なの!? あれをかわしていくなんて。



 モエヨは気を溜めて炎の波を打ち出した。


「炎の広範囲魔法?これは流石に先読みしてもかわし切れない」



 炎の波をライト斬りで迎え撃つ。波は二つに裂け分かれていく。それでも完全にはよけられずダメージが入る。でもこれで相手へ入れる。じじいは力を振り絞り、モエヨの懐へ向かっていく。MPが少ない、これが最後のライト斬りだ。モエヨも何とか反応し、炎の魔法を詠唱する。



 ガギィ!


 杖ごとモエヨは吹っ飛び、倒れた。間に合ったのか、MP切れだったのか。とにかくじじいの最後の攻撃が届いたのだ。


「いや、最後のライト斬りだったけど。普通の攻撃は出来るから」
「勝負あり、レイス選手の優勝です!」


 体力的には弱い魔法使いで助かった、という所か。もしモエヨが万全の状態であったなら…


「何にせよ、俺の勝利だ」


 じじいが若者たちを制し優勝。にわかには信じられない奇跡を目の当たりにした観客は、大いに盛り上がった。後世に伝えられる、伝説の大会になるのかもしれない。





 運も手伝ったじじいの戦いは終了となった。課題は多く、次までにもっと強くならなければならない。




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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