第100話

文字数 1,224文字

 魔物は両方の爪で攻撃してくる。先読みでかわし、聖剣を振るうもかわされる。


「何て素早いやつだ」


 しかし相手が出来ない程の速さでもない。じじいはレイを発動する。


 ドドドドド!


 光の柱は連続ヒットする。


「ガルル!」


 ダメージを物ともせずに魔物は突っ込んできた。横に大きくかわしてライトボールを連続で打ち込む。


 ドガドガッ!


 全弾命中する。それでも魔物は怯む事無く向かって来た。


「何なんだろう、消耗させるのが目的なのか?」
「そうかもしれない。じじい、決めちまえ」


 魔物の攻撃をかわしながら体当たりをして後ろへ飛ばす。追撃で奥義を繰り出した。


「光の一撃!」


 ガイコツの時と同じく、光の奥義で止めを刺した。魔物は何も言わずに縦に真っ二つになり倒れた。


「ふう…毎回奥義を使わなきゃいけないのか。こんバトルが続くのはきついな」
「確かに。さあ、奥へ行くぞ」
「お前は良いよな、見てるだけだもん」
「今度は俺がやってやろうか?」



 そんな事を言いながら扉を開ける。さっきの洞窟と同じく、その先には小部屋があった。同じ様に石の机の上に紙がある。


「嫌な予感しかしない……」
「でも見ない訳にもいかないだろ」


 じじいは紙を取って、裏返した。



「は ず れ」



 じじいは無言で紙を引きちぎった。


「どっちもハズレなのかよ!」
「こりゃやられたな」


 重い空気の中、地上へ戻った。






「多分、力の消耗もそうだけど時間稼ぎだな」
「時間稼ぎ?」
「魔王もまだ完全に復活はしていないんだ、きっと」


「今日は戻って休むか」
「うむ」




 キャンプ地へ戻る為に歩き出す。


「無駄な時間を過ごしてしまったな。疲れたし、喉も乾いてきた」
「そうだな……ん?」
「どうした、ニャン太?」


 ニャン太は少し横道に逸れて行った。その先には大き目の井戸があった。


「井戸か……水、飲めるだろうか?」
「どうだろうな?整備もされていないし、汚い水かもな」
「俺の胃は丈夫だぜ」


「……めっちゃ深い井戸だな。奥が見えない」
「本当だな。縄梯子までついてるぞ」
「水自体あるかどうかも怪しいな」



 取り敢えずロープを引っ張ってみた。手応えは無く軽い。


「軽いな……水はなさそうだ」


 桶が上がってくるまでロープを引っ張るも、案の定空っぽだった。



「……てかさあ、この奥怪しくないか?」
「怪しいって?」
「RPGでよく、こういう井戸って入れるじゃん」
「いや、これ現実だし」

「どこか異次元にワープ出来たりするかもよ」
「異世界物を書く気は無いぞ」
「メタンじゃねえよ!」



「……でももし何かあったら見に行くべきなのか?」
「まあ、手掛かりが潰れちまったしな」
「仕方ないな。あんまり広そうだったら切り上げて明日にするからな」


 仕方なく2人は梯子を降りて行った。




 長い梯子。

 やっとそこが見えてきた時に、違和感を感じた。


「おい……何か結界の中に入り込んだみたいな感じがしたんだが」
「ああ、今まで感じなかったが」
「これ、魔王の魔力だな」



「どうやら戻って休むのは中止になったみたいだな」





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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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