第69話

文字数 1,168文字

「おーい、じいさん」
「え、ヘンリーか?」



 塔の近くに張ったテントの前でBBQ中だったじじいの前に、ヘンリーとドーンが来た。全国大会が終わってから訳2週間、なのに懐かしく感じた。



「ドーンも、久し振りだな」
「調子はどうですか?」
「まあまあだな」

「いやあ、陣中見舞いで家に行ったのに居ないんだもん。家のドアに張り紙するのは良いが、場所位書いておけよ」
「いやすまん。本当に来客があるとは思わなかったんでな」

「じじい、魚が釣れたぞ。……って、ドーンとヘンリーじゃないか」
「現れたな、喋る猫ちゃん」
「ニャン太さん、釣りに行っていたのですか?」


 ニャン太は釣ってきた魚をじじいの前に放り投げた。その数なんと20匹。


「釣り過ぎじゃ。ずっと魚になるじゃないか」
「魚、良いじゃん」




「前回はドーンが修行に付き合っていたんだろ? 今回は俺も付き合ってやるぜ」
「え、有難いんだが俺は大会は……」
「レイスさん、それに大変な事が起こっているんです」
「大変な事?」



 ドーンが言うには、ケーオが世界大会に出場するらしい。

 ケーオはじじいの出た全国大会には出ずに、もっと優勝賞金の高い別の王国の全国大会に出場した。そしてそこで優勝した。現場を押さえる事は出来なかった様だが、やはりクスリを使用しているっぽい。

 更に最近、ケーオから邪悪な魔力が感じられる様になってきている。急に闇属性の魔法を使用し始めた。何か魔の者と契約でもしたのかもしれない。



「おい、じじい」
「ああ。闇属性の魔法は人間に扱えるものではない。かと言って、そんなの使える魔物も残っていないハズ」
「もし一人だけ居るとしたら」
「可能性はあるな」

「ヘンリーは、去年の世界大会で俺がやられたヤツなんだけどな。話を聞いてると、去年より強くなってるみたいだ。まあ、クスリをやってるのも驚きだがな」
「もしかして魔王の復活が近いのかもしれません」


 じじいとニャン太は顔を合わせた。

 そして口を開く。





「へえ……じいさん勇者だったのか。でもそう考えるとその強さも納得な。猫が喋るのも、な」
「そうですか……もう魔王は復活しているのですね」

「もしかしたらケーオは今、魔王と何かしら繋がっている可能性がある」
「じじいの言う通りだ。生物に寄生する方が本体の傷の治りは早いはずだし」
「なら、ケーオとは会わないといけないな。じいさんよ」


 魔王の手がかりが無い以上、可能性が少しでもあるなら当たるべきだ。



「よし、じゃあ取り敢えずスパーリングしてみるか」
「はい?」
「いきなりですね」
「おうよ、俺もあれから修行してるんだ。今度は負けねえぞ」
「スパーリングじゃないのかよ」

「今から飯だ。外も暗くなってくる。スパーは明日にしな」
「飯か、飯の方が重要だな」
「じゃあ、明日は私も手合わせ願いますね」
「おう、みんな宜しく」




 結局は大会に参加する事になった。




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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