第104話

文字数 1,251文字

「まだまだ、これからだ。」


 手を翳した魔王は闇属性の針状の魔法を撃ち出す。


「ダークニードル!」


 闇属性の小さな刃がじじいを襲う。ダークニードルはガードした聖剣の間を縫って、じじいを掠めて行く。


「くっ、この魔法嫌いなんだよな」
「まだだ」


 魔王はそのままダークフレイムを発動した。じじいはガードの体勢のまま、ダークフレイムを聖剣ごと食らってしまう。


「うわっ」


 後ろへ飛ばされる。何とか踏みとどまり、レイを発動。


 ドドドドド!


 ダメージは少ないだろうが、時間を稼いで距離を取れる。魔王は片手で上方をガードした。やはりダメージはすくなそうだ。

 魔王は爪に魔力を込め始めた。


「勇者レイス、お前の技を見て面白い攻撃を思いついたぞ」
「どういう事だ?」
「聖剣に魔力を込めて斬り付ける攻撃、真似してみようか」


 魔王は爪に闇の魔力を纏わせる。そしてそのまま攻撃してきた。ライト斬りの闇バージョンか。


「なるほど……そんな攻撃を編み出したのか」
「シャドウ斬りとでも名付けるか?」
「シャドウは闇じゃなくて影って意味だけどな」


 じじいもライト斬りで応戦する。


 ギイィン!


 2人の攻撃はぶつかり、お互いに弾かれた。



「こっちの方が元祖だ」
「ほう、まさか互角だとは」
「付け焼刃な攻撃で勝てると思ったのか?」


 魔王の爪にはまだ闇の魔力が籠っている。じじいのライト斬りは毎回魔力を供給しないといけない。


「いや、性能の面で負けてるぞ。変に意固地にならずに戦うんだ」
「ちっ、分かってるよ」



 じじいは聖剣を構え、魔力を溜め始めた。


「その構えと魔力、ついに奥義を出すのか」


 魔王も魔力を溜め始める。



「……魔王ビームか?」




 魔王は詰め寄り、シャドウ斬りを放つ。爪の周りにも魔力が漂っている。先読みでの回避ではダメージがあるかもしれない。じじいは後ろへ飛び退いた。


「そんな飛び退いては無防備になるぞ、魔王ビーム!」


 魔王は魔王ビームを発動した。魔王の手のひらから上方へ消え去った魔力が、じじいの上方から強力な魔力の塊となってじじいを襲う。



「その攻撃は前回見ている。攻撃方法は分かっているんだ。いくら強力な攻撃でもそうそう食らうか!」


 上方に魔力の気配を感じた瞬間に、じじいは魔王へ向かって駆けだした。同時に魔王ビームが降り注ぐ。



 ドゴオォォォン!



 ギリギリ、魔王ビームは当たらなかった。


「なっ!?」


 じじいはそのまま魔王に斬り付けた。



「奥義・光の一撃!」


 ズシャァ!


 聖剣から眩い光が溢れ出して、剣閃と共に魔王を切り裂いた。魔王は自身の必殺技をかわされた驚きもあり、動けなかった。


「う……ぐおお」
「やったか!?」
「フラグ立てんじゃねえ!」


 さっきのドラゴンの例もある。じじいは続けてライト斬りを放った。


 ギィン!


 ライト斬りは魔王に防がれてしまう。



「やっぱり、倒し切れていなかったのか」
「やるな……完全体の私にここまでダメージを与えるとは」



 ドラゴン相手に倒し切れなかった奥義だ。魔王を倒し切れないのも仕方がない、か。

 それでもダメージは確実にあった。





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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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