第14話

文字数 774文字

 1人になった控室に戻って、椅子に座った。全身に倦怠感が襲ってくる。


「明日には筋肉痛もくるのかな?」


 全盛期であれば数秒で終わらせる事ができたであろう相手。それが、今の試合は2分ほど掛かっただろうか? じじいには酷なものである。


「決勝ですが、15分後に始めます」
「ああ、分かった」
「失礼ながら、レイスさん。貴方の素晴らしい動きに感銘を受けております」
「いやいや、若い頃はこんなモンじゃなかったよ」


 気持ちだけは未だに若い分、さっきの自分の動きに苦笑いが出る。


「昔もこの様な大会に出られていたのですか?」
「出たよ。ずっと昔だけどな」
「昔もさぞ強かったのでしょう。強さを維持する秘訣はありますか?」


 秘訣……ねえ。

 実際にかなり落ちた処から戻してきてるんで、維持できていない訳だが。更に言えば、光の加護のお陰でもあるし。と考えたが、やめた。


「何事も継続する事だよ、きっと」
「なるほど、継続は力という事ですね」


 適当に言った言葉に納得し、兵士は去っていった。


「継続は力か……今まさにそれを実感してるよ」




 もうすぐ決勝が始まる。

 結果がどうであれ、帰ったらゆっくりしよう。

 もし優勝出来れば、1ヶ月後に次の大会だ。このままでは勝ち抜けないかもしれない。スライムやゴブリン相手では限界があるだろう。

 力の実だけに頼っているのもいけない。あれは力を取り戻すだけのもので、実践を増やして元々の力を成長させていかなければ。魔王が復活する時までに全盛期の力を取り戻しておかなければ。それが何年後、何百年後かは分からないけど……



「レイスさん。間もなく決勝です。闘技場の方へお願いします」


 運命を賭けた、と言う程ではないが……とにかく決勝戦が始まろうとしていた。相手は炎の魔法使いで名前はモエヨとか言ったか。相変わらず酷い名前だ事。


 じじいは闘技場へ向かって歩き出した。




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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