第31話

文字数 1,254文字

 控室に戻ったが、そこに選手は自分しかいない。Aブロックで残ったのは一人だけ。そしてBブロックの方でも、最後の一人を決める為の戦いが始まろうとしている。

 さっきの戦士に対し、自力で打ち勝てたのは励みになった。


「まだまだ現役と比べれば弱いけど、よくぞここまで強くなれたもんだ」


 椅子に座りもう1つの準決勝が始まるであろうテレビを見る。試合が長引いたら時間が稼げる。その間に少しでも身体を休めたいのだが……これまでの試合を見る限り、それも難しそうだ。



「お、始まった」


 相変わらず空を飛びながら魔法を撃つ、18番の魔法使いハピ子。その魔法を何とか捌きながら隙を伺う、31番のコザ。これではジリ貧だ。その内に決着は着くだろう。机の飲み物の方を見て、手を伸ばした。


 わああっ!


 観客が騒ぐ。


「なんだ?」


 剣を投げつけて、それをよけたハピ子へジャンプして体当たりをしていた。上手くヒットする。二人で地面に落ちた後、コザはハピ子にパンチを浴びせた。

 1発……2発……3発目でハピ子は逃れた。魔力で一気に距離を取る。


「今のは惜しかったかもしれない。基本的に魔法使いは体力が少ない。距離を詰めれば勝機も見えただろうに」


 しかし距離が離れた上に剣を投げてしまった状態では……



 テレビがハピ子を映そうとした瞬間、ハピ子が凄い勢いで詰め寄った。映像がコザの方を向いた時には、ハピ子がコザを殴り倒していた。


「調子に乗るなよ。手加減してやっていたと言うのに」
「う、ぐぐぐ」
「死ね」



 ハピ子が手刀の様な形でコザの腹部を突く。


 血が飛び散った。何度も何度も腹部を突き、兵士が止めに入ろうとしていた。その兵士を魔法で退かせ、またコザへ攻撃をする。


「ナイフか何かを仕込んでいるのか!? どっちにしろやりすぎだ!」


 じじいは闘技場へ走り出した。





 闘技場では凄惨な状況が待っていた。

 1人笑いながら手刀を続けるハピ子。

 止めに入った兵士は魔法で倒れ動けないでいる。

 そして、もう動かなくなっているコザ。



「いい加減にしろ!」


 近付き聖剣を振るう。ハピ子はそれを飛んでかわし、距離を取った。


「何だお前は?」


 その両手は血に染まっている。


「もうとっくに決着は着いていた。ここまでやる必要がどこにあったんだ!」
「別に殺すのは違反ではないはずだが?」
「やりすぎだ!」


 スッとハピ子の笑顔が消える。


「面倒臭い。じじい、お前も死にな。」


 ハピ子はこちらへ突っ込んで来て、手刀を振るった。聖剣で受け止めるとギィン! と鳴る。


「やはりナイフか何かを仕込んで……えっ!?」



 ナイフでは無かった。鋭い猛獣の様な爪がそこにはあった。


「お前……魔物だな!?」
「ふん、バレちゃったか。私はデスハーピー。魔王直属軍のデスハーピーだ!」


 観客の悲鳴が聞こえる。魔王直属軍……咄嗟にデスを思い出す。


「デスのうえにハーピーとはふざけてるな。」
「あん? じじいが大会に出てるのも大概ふざけてるよ。」


 デスハーピーは再び距離を取った。



 もう大会どころでは無いだろう。レイスは聖剣を構えた。




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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