第64話

文字数 1,508文字

「勇者も歳を取ったものだ。昔のお前なら、さっきの攻撃でダメージを与えていただろう」
「黙れ」
「年老いたお前の攻撃ではかすり傷程度にしかならんわ」
「黙れっ!」


 じじいは再度ライト斬りを放つ。魔王はそれをかわす事も避ける事もせず、ただ受けた。


「なっ!?」
「とは言え、復活して最初の相手がお前とは。運命すら感じるぞ。ふはははは!」


 全く効いた様子も無い。これでは奥義を放ったとしても……しかし魔王を倒す為だけにここまで生きてきた。ここはやるしかない。


「この戦いが運命っていうなら、お前が再び封印されるのも運命。行くぞ魔王! これが俺の人生最後の決戦だ!」
「良いだろう。復活しかばかりで力は戻り切っていない。だがお前の相手ならこれで充分だ」


 魔王は爪を振るう。先読みでそれをかわし、剣撃を叩き込む。


 ギィン!


 直撃するも、やはりダメージが通らない。まるでドラゴンの様な強靭な皮膚である。


「普通に攻撃してもまるで効かない……」


 いきなりで申し訳ないが、奥義で攻撃するしかない。じじいは気を溜め始めた。


「ほう、必殺技を出すのか?」
「普通の攻撃が通らない以上、やるしか無い」
「面白い、受けてやろうじゃないか」


 魔王は爪を長く伸ばす。本当に受け止めるつもりだろうか。


「いくぞ、奥義・光の一撃!」


 じじいは魔王に駆け寄り、全力で奥義を放った。聖剣が光り輝き、魔王を襲う。魔王は爪で襲い掛かる聖剣を受け止める。



 ギイィン!



 光が収まっていく。

 渾身の奥義は爪で受け止められてしまった。



「ま、まさか……」
「今まででは一番良かったぞ」


 魔王は聖剣を受け止めたまま爪を振りぬいた。じじいは勢いよく吹き飛ばされ、壁に打ち付けられる。


「ほう、私の爪に傷をつけた様だな。流石は勇者という訳だ」


「じじい! しっかりしろ!」
「ぐ……ハイヒール」


 回復魔王で立ち上がる。しかしどうすれば良いのかが分からない。



 光の一撃を直撃させる事が出来れば、ダメージ位はあるかもしれない。それでも倒せるレベルでは無いだろう。奥義自体がそう何回も打てる物でも無い。MP消費が激しすぎるのだ。今ならあと2~3回は打てるかもしれない。それでは魔王は倒せない。

 若い頃の、全盛期の力があれば……修行不足か……いくら何でもこんなに早く魔王が復活するなんて……


「こんなのが運命、だとでも言うのか?」
「ふっふっふ。どうやら運命の女神は私の味方だったようだな」
「取り敢えず、足掻くしかない。勝てなくても全力で戦い続けるしかない」
「その心意気は素晴らしい。お前は人間の中で唯一、尊敬に値するだろうな」


 魔王は魔力を高めている。


「その褒美だ。前回は見せられなかった、私の魔法を見せてやろう」
「魔法だと?」
「これを冥途の土産に食らって、この世から消滅するが良い」


「させるか!」


 ニャン太が魔王に飛び掛かるが、一撃で吹き飛ばされる。



「ただの精霊如きが。」
「ニャン太!」


 魔王は魔力を開放し手を空に挙げた。魔力が空に吸い込まれる。



「どんな魔法を撃って来るんだ?」


 少し後、巨大な魔力の塊が天井を破り空から降ってきた。


「う、うわぁっ!」


 あまりに早すぎて、避ける事すら出来ない。


「これが私の必殺魔法、魔王ビームだ」
「相変わらずネーミングセンスの無い作品だぜ!」


 ドゴオォォォン!


 直撃後、爆発した魔法でじじいはまた吹っ飛んだ。聖剣は遠くに飛んでしまう。じじいは右足と右腕が消滅する。


「う、これは……ダメかな」


 いくら不死とはいえ、消滅して肉体はどうなるのだろうか。大会の賢者なら復活できたっけ?

 そう考えながらも、目の前がぼやけてくる。視界が段々と闇に染まっていき、その中心から光が一気に広がった。




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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