第91話

文字数 995文字

 家に戻ってからは暫くゆっくりしていた。今回の大会も本当に疲れた。戦いの疲れもある。初めての敗北による精神面的な疲れもある。

 なにより……船酔いだ。



「テレポートの技術、もっと進化しないかな?」
「いきなりどうした?」
「船酔いきついんだって」
「暫くは乗らないじゃん」
「もし魔王の居場所が遠い孤島だったりしたら……」
「ああ、まあ……そうだな」



 最近、近くの森に変な生物が住み着いたらしい。買い物をしていた時に店の人から聞いた。魔王が復活してから、あの森に棲んでいた野生のスライムやゴブリンは姿を消してしまった。その隙に新しい野生の魔物が来たんだろうか?


「明日から修行を再開するんだけど、1回森に行ってみるか?」
「ああ、例の変な生物か?」
「ああ。何で魔王と繋がって来るか分からないしな」






 翌日、じじいとニャン太は二人で森へ行ってみた。森はひっそりしており、魔物の姿は見当たらない。変な生き物の噂は嘘だったのだろうか?

 洞窟の前まで来る。


「……」
「……」
「ふにゃ?」



 何か居た。てるてる坊主と言うべきか、ゴーストの亜種と言うべきか。とにかく良く分からないモノがそこに居た。



「おや?こんな所に人が来るなんて珍しいのね」
「おい、喋ったぞ」
「ああ、喋ったな」

「ふにゃにゃんはふにゃにゃんなんだな」
「え、ふにゃ……?」

「名前、ふにゃにゃん」
「変な名前だな」
「この作品でそれは今更だけどな」


「んで君らはだ~れ?」
「あ、ああ。俺はこの近くに住んでるレイスだ」
「ニャン太だ」
「君は精霊の類かな?」
「分かるのか?」
「うん。何となく」



 見た目は明らかに怪しいが、邪悪な雰囲気は感じなかった。こいつは何なんだろうか。



「んで何しに来たの?」
「いや……何か最近この森に変な生物が住み着いたって噂で」
「どう考えてもお前だよな」
「あ~そうかもね」

「お前は何の為にここに来たんだ?」
「ここは空気が美味しいからね。ここで住んだら楽しいよ」
「空気が美味しい?」
「魔王の影響が消えたからかな?」
「さてね」
「まあ、元々自然いっぱいの森だし」



「……まあ害はなさそうだな」
「そうだな。ただの変な生物だ」
「それひどくね?」



 2人は無言で家に帰った。





 次の日、魔物の気配がした。


「おい、じじ。」
「ああ、森の方だ」
「何匹か強い魔力の魔物が向かっているな」



 まさか修行でなく2日連続で森に行くとは思っていなかった。剣を携えてニャン太と共に走り出した。




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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