第90話

文字数 1,160文字

「レイスさん、おはようございます」
「おはよう」


 城の入り口でポーンが待っていた。今日は国王に会うらしい。



「さあ、入って下さい」


 ポーンは意気揚々とじじいを中へ案内した。ケーオを捕らえた件で報酬でも出たのだろうか?中は豪華で広くて……準優勝でもあんなに賞金が出たんだ、余程金があるのだろう。階段を昇り更に先へ進む。



「この先が王の間です。入って下さい」
「ああ……何か緊張するな」
「こんな機会、そうそう無いぞ」



 ギイイイッ


 両開きの大きなドアが開いていく。王の間も例にもれず広く、奥に王座に座った国王らしき人が座っていた。


「失礼します」
「入りなさい」


 国王の前で跪く。


「昨日はケーオ逮捕の協力をしてくれた、との事じゃな」
「いえ、それは結果です」
「いえ、見事でした。私も準決勝でレイスさんに敗れましたので」
「ほう、ポーンに勝つとな」
「私1人ではケーオを捕らえる事は出来ませんでした」



 この国王は自分の国で開催された大会に興味が無いのだろうか?


「ドーンやヘンリーの協力もあり、逮捕出来たと思います」
「ドーンはルファウスト王国の宮廷魔導師。ヘンリーもルファウスト王国の魔法剣士です」

「なるほど。あの王国にはだいぶ世話になったようだな。近々、使者を送っておこう」
「俺には何もないのかよ」
「!? この喋る猫は何だ?」

「ニャン太さんはレイスさんの相棒です」
「ニャン太、人前で喋るようになったのか?」
「ああ、いつまでもにゃーにゃー言ってらんねえよ。喋れる猫で良いや」


「昨日お話した通り、レイスさんは魔王の行方を捜しています。何か手伝いできないかと」
「うむ。こちらでも不穏な動きが無いか調査してみよう」
「有難うございます」





 どこの国の王であっても、偉いさんってのと会話するのは疲れる。城の出入り口を出てからじじいはため息をついた。


「おい、じじい。お土産に最高級の猫缶が入ってやがる」
「お前は呑気で良いよな」
「帰りの船で早速食べるぞ」
「はいはい」



 今回の大会を思い出す。

 刺華・金銀銅・ポーン・ケーオ。何だかんだで強い選手ばかりだった。

 刺華……バランスが良く、思い切りも良い選手だった。最後の攻撃が当たったら危なかっただろう。

 金銀銅……変な名前だな。武闘家との対戦って大変なんだな、って思った。そっちも鍛えていかなければ。

 ポーン……戦術に長け、思いもしない攻撃を仕掛けてきた。色んな戦い方がある。ポーンの戦い方は勉強になる。

 ケーオ……魔王やクスリ関係なく強かった。経緯はどうあれ、初の敗北を喫してしまった。もう再戦は叶わないだろうが。



「スサノオも忘れるな」
「ああ、あのパワー馬鹿か」
「にゃにを!」



 来年はどんな大会になるだろうか? ドーンはもう出ないらしいし……ヘンリーやルーキともまた戦う事になるだろうな。




 それより、まずは魔王だな。




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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