第27話

文字数 1,161文字

「おめでとうございます」
「ありがとう」
「次は私と、ですね」



 控室に戻ると、次の対戦相手となったドーンと言葉を交わす。じじいになってからは初めての友人だ。あの森で出会ってからまだ2か月は経っていないが、一生忘れはしない。…そう思った。

 じじいがボケない限り。



 テレビで他の選手の戦いを見る。ドーンに勝ったとして、その次に戦う可能性のある選手を探す。


「Aブロックは10番の魔法使いか13番の戦士だな」
「そうですね。消耗した状態では、どちらと当たっても厳しいです」
「それは間違いないな」


 Bブロックは相変わらず18番の魔法使い一強のように見える。空すら飛び、素早い動きから強力な魔法を撃ちこむ。2回戦が終わり、未だにかすり傷すら負っていないのだ。




「それでは第三回戦を始めます」
「ついに始まるか」

「第一回戦です。2番と7番の選手は奥へどうぞ」



 2人で控室の奥へ進む。通路は途中で2つに分かれている。ここから闘技場の右側・左側に行ける。


「ダメージはどうだ?」
「大丈夫ですよ、もう回復しました」
「そうか。じゃあ心置きなく行けるな」
「それはこちらの台詞ですよ」


 軽く微笑み合って道を分かれる。奥に見える階段を昇れば、闘技場だ。



「それでは第1試合を行います。左側……強力な魔力で勝ち進んで来ました。魔法使いドーン選手!」


 歓声が聞こえる。二回戦での逆転劇の効果も大きいかもしれない。


「右側……剣も魔法も使いこなし勝ち進んで来た。魔法剣士レイス選手!」


 階段を昇ると歓声が大きくなる。視線の先にはこれから戦う魔法使いが立っていた。




「バトル、スタート!」




「遠慮なくいきます。宜しくお願いしますよ」
「ああ、こっちも思いっきり行くよ」


 ドーンが杖を構える。こいつの爆発魔法は下位の魔法。それでもかなりのダメージだが、恐らく詠唱が必要な強い魔法。言わば切り札も用意しているだろう。もっともさっきの武道家の様に、詠唱する暇を与えなければ良いのかもしれないが……


「ボム!」
「ライトボール!」


 互いの魔法がぶつかる。爆発し消え去るが、あの余韻を見るに単純な魔力ではドーンに分がある様だ。そう考えている矢先にドーンが杖で殴り掛かってくる。想定外の攻撃だったが、後ろへ飛び退きかわす。ドーンは少し間合いが狭まった状態で魔法を撃ってきた。


「これは……」


 ドガァン!


 不意を突かれたのもあるが、よけきれずに被弾。聖剣でガードはしているがダメージは残る。


「こいつ、さっきの戦いで身に着けた事を応用したのか」


 今のは最初だから有効であっただろう。今後不用意に殴り掛かってきた場合は、簡単に斬って落とせるはず。


「今ので結構ダメージを与えるハズだったんですが、流石レイスさん上手くガードしましたね」
「お前の魔法は大会前から見ているからな」



 お互いに向き合い、構え直した。




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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