第85話

文字数 1,446文字

「3位決定戦。兵士・ポーン選手VS剣士・スサノオ選手」



「ちゃんと腕は治ったみたいですね」
「ああ、心配どうも!」
「どちらにしろ私達の最後の試合です。楽しみましょう」
「そうだな。まあすぐに終わるが」



「さて……スサノオに対してどう戦う?」
「分からないが、アイツはあくまでも兵士だ。普通の剣士とかでは分からない戦い方もあるんだろうな」




「バトル、スタート!」



 スサノオは普段通り、大剣を構えた。いつもの強撃だろう。ポーンは槍を低めに構える。暫く睨み合いが続くが、スサノオがジリジリと間合いを詰める。


「スサノオさん、貴方に力では対抗できないでしょう。しかしこういう戦い方もある事を覚えておいて貰いましょう」
「敵わない力で対抗……技という事だな!面白い。私は今まで様々な技を、この力でひっくり返してきた」



「相変わらず熱い男ですね」
「かっけえ」



 スサノオは一気に大剣を振り下ろした。ポーンはギリギリでその1撃をかわす。


「ほう、なかなかやるじゃないか。今度はどうかな?」


 スサノオは再び大剣を構える。


「貴方のその攻撃は、威力もさることながら実はスピードがとても速い。それゆえに多くの選手を打ち倒してきたとも言えます。しかし、そのスピードに対応できる位の者ならかわせます。」
「ほう、それならば……」


 スサノオはまた大剣を振り下ろす。ポーンはそれをまたかわすが、スサノオは振り下ろした攻撃をそのまま横に薙ぎ払ってきた。ケーオ戦でも見せた攻撃だ。ポーンは槍でその攻撃を受け止める。


「その2撃目はさらにスピードを重視している。更に1撃目のような振り下ろしによる力の加速が無い。故にガードできる」
「ぐっ、しかし今のでもガードするとなるとかなりの力が必要だ。ポーン、やはり素晴らしくバランスの取れた選手だ」
「私は戦場で様々な人間と戦って来ています。いくらパワーに特化していようと、それだけでは私には勝てない」


 スサノオは無理やりパワーでポーンを押し飛ばし、追撃を加えようとする。ポーンは体制を整えた後、サッと槍を横に捨てた。


「槍を!?」



 一瞬、意識が槍に向かう。その隙を見逃さずにポーンは飛び上がった。




「あれは……?」
「そうか…そういう手もあるのか」
「随分と大胆な戦略に出ましたね」


 ポーンは腕をスサノオの首に絡めて後ろへ回り込んだ。肘の内側をスサノオの喉元に宛がい、もう片方の腕を使い締め上げる。



「……!?」
「格闘家や武闘家でもなければこの戦法を読み切る事は出来ない。そして、今までの戦い方でも分かる。貴方はそれらに精通はしていない」


 腕をグッと締め上げる。スサノオは何とか逃れようとするが、ポーンの腕はしっかり入っており外せない。スサノオの膝が崩れ落ちる。それでも何とか逃れようと身体を動かす。



「今までこういった戦いを経験した事も無いでしょう。こういった裸絞の回避方法は分からないでしょう」



 少しした後、ポーンは腕を開放した。スサノオは完全に意識を失っていた。



「それまで。ポーン選手の勝利です。今大会、第3位はポーン選手です」




「体術ってやつなのか?」
「あそこまで完全に腕を入れらる前に逃げるべきだな」
「ってか、俺の時にあんなんやられたたらヤバかったんじゃ……」
「あんなん、そう簡単に決まるモンじゃないって。スサノオの知識の無さと油断があったんだろうな」
「それに、技を掛ける前に槍を無造作に捨ててそちらに意識を向けさせています。外されていたらどうしようも無くなっていた可能性もあります」
「まさに捨て身の攻撃って訳だな。」




ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み