第25話

文字数 1,240文字

「それではこれから第2回戦を行います。第1試合、2番と3番の選手は奥へどうぞ」


「では行ってきますね。お互いに勝てば、次は戦いになります」
「そうだな。先に待っててくれ」



 ドーンが闘技場に進むのを見届けてから、じじいはその様子を映すテレビに目を向ける。




「それでは第1試合を行います。左側……1回戦は圧倒的な魔力で圧勝した、魔法使いドーン選手!」


 ワァっと歓声が上がる。派手な爆発魔法は受けも良いらしい。


「右側……こちらも圧倒的なスピードとパワーで勝ち進んだ。格闘家キック選手!」


 こいつはキックが得意なんだろうか? だとしたら相変わらず酷いネーミングセンスのゲームだな。


「メタんじゃねえよ!」


 っと、1人でツッコミを入れる。





「俺はこのまま凄い勢いで優勝してやる」
「そうですか。では凄い勢いで止めましょうか」



「バトル、スタート!」



 開幕から魔法を放つドーン。キックはそれをかわし、ドーンへと走り出した。今度はキックの進行方向の途中で魔法を爆発させて、相手の進行を妨害し距離を取る。


「凄い威力の魔法じゃないか。でも直撃さえしなければ!」
「くっ、早いですね」


「不味いな、このままではジリ貧だ」



 似た様な攻防を繰り返す内に、徐々にだが距離が詰まっていく。一瞬スピードを上げたキックが、ドーンの懐に潜り込んだ。


「し、しまった!」


 名前通りの強烈な左のミドルキック。ギリギリ、ガードはしたがドーンは吹っ飛ばされてしまった。


「上手くガードしやがったな。でもこれで俺の勝ちだ!」



キックは追撃の為にドーンを追っていく。


「! こ、この流れは!」


 さっき控室でした会話を思い出す。




------------------------------------------------
「ドーンの次の相手は格闘家だったな」
「そうですね。素早さの高い強敵です」
「なるほど……良い作戦があるんだが」
「作戦? どんなんですか?」

「爆発魔法の特性を逆に利用するんだ。こうすればこうなって、その後……」
------------------------------------------------




 ちょうどドーンもその会話を思い出していた。


「やるしかないですね……ボム!」


 キックに向かいながら、いつもの爆発魔法を自分の後ろ向きに発動。その爆風で一瞬の推進力を得る。さっきまでのドーンとは比べ物にならない速さで、キックへ向かって行った。



「な、何だと!?」


 半分以上が爆風で吹っ飛んだ状態のドーン。勿論、動きをコントロールする事は出来なかった。


 ドンッ!


 結果的にキックへ体当たりをする形になった。でもこれは、予想通り。今まで遠距離でしか使用してこなかった爆発魔法。ドーンはキックが困惑し隙を見せている間に、手をキックの胸に当て発動させた。


 ドガァン!


 密接距離からの爆発魔法にキックは対応できず、ただ倒れるしかなかった。




「決着です。ドーン選手の勝利です!」


 歓声が沸き起こる。ドーンは息を切らせながらも、その手を上に挙げた。




ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み