第2話

文字数 1,070文字

 とある森の近くの小屋におじいさんが一人で住んでいた。
 ペットとして1匹の喋る白猫を傍に置いて……


「じじい、今のアンタじゃ無理だぜ」
「何だと?」
「そんな武術の大会なんぞに出て、勝てる訳無いじゃんか」
「何の、このレイス! まだ222歳! 若いもんには……」
「いやいや、自分の身体をよく見てみ?どっからどう見ても、ただのじじいだろうが」


 魔王との死闘から200年が経った今、勇者の存在を知る者も居なくなった。今はその伝説だけが伝承として残っているだけであった。


「何だと、やんのか? この化け猫が!」
「何だと、このじじい! やってやんよ!」


 木の枝を拾い殴りかかるじじい。それをニャン太はいとも簡単に回避する。

 実際の所じじいにしては素晴らしい動きであるが、流石に若い頃と比べる事は出来ない。

 続けざまに木の枝を振りかざすじじいだったが、ニャン太のカウンターの爪を食らって倒れる。


「ううう……何で……何で……」
「そんな身体で光の精霊の使い魔である俺に敵うかよ」
「光の精霊様、何で不老不死にしてくれなかったんだ……」


 200年前に光の精霊から不死の身体を授かった。いずれ復活する魔王に対抗する為である。

 しかし不老では無かった。肉体は少しずつ少しずつ衰えてしまっているのだ。



~光の精霊の良い訳~
「忘れてた、ごめんちゃい(てへっ)」



「不老でない事に気付いてからはトレーニングもしたんだよ? でも老いには勝てないじゃん? でも死なないじゃん? 魔王復活したら勝てないじゃん? どうすんの?」
「流石に魔王には俺でも勝てないしな」
「お前で勝てるんなら俺を残す意味もないし」
「まあ、すぐに復活しない事を祈ってろよ。その間に力の実で強さを取り戻せよ?」


 聞きなれない単語にハテ? となる。


「何その力の実って?」
「え、覚えてないの? 野生の魔物が持っている小さな宝石の事だよ」
「知らんがな」
「それを持って家のリビングの魔法陣に行けば、能力がアップするんじゃん。200年前に光の精霊に言われたろ?」
「知らんがな……いや、歳の所為かな?」
「都合の良い時だけじじい面すんなよ!」
「ってか、何でもっと早くに教えてくてないんだ?」
「いや、聞かれてないし」
「このくそ猫め!」


 ニャン太へ殴り掛かるも簡単にいなされてしまう。続けざまに拳を振りかざすじじいだったが、ニャン太のカウンターの肉球を食らって倒れる。


「ひどい」
「どっちが!?」



かくしてニャン太を倒す為……では無く、魔王を倒す為に野生の魔物が出る近くの森に行く事に。

目指せ! 武術大会優勝……ではなく、世界の真なる平和!




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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