第6話

文字数 998文字

武術大会も明後日に迫った日、ついに会場へ向かう事になった。近くの町から船に乗り、隣の大陸にある闘技場まで行かなければならない。

朝から出発すれば、夜には到着するだろう。そして1日ゆっくりして大会に臨む、といった算段だ。



「ニャン太、お前来ないの?」
「行かねえよ。ずっとにゃーにゃー言ってんの面倒だし」
「お前、俺についた使い魔じゃないのかよ」
「別に子供じゃないんだし、1人で行けるだろ?」


 思えば、この200年の間ニャン太とずっと一緒だった。よくよく考えれば、離れて行動するのなんて久し振りだ。


「寂しくなんてないんだからねっ!」
「え、急に何このじじい? 気持ち悪いんですけど!?」





~船の中~





「レイスさん、こんにちは」
「ん? 誰だっけ? 顔は覚えているんだけど」
「もう忘れたんですか? ドーンですよ」
「ああ、そんな気がしてきた」


 爆発魔法を使う男だったな、と思い出す。こんな所で再会するなんて、そんな偶然もあるのか。


「どこに行くんですか?」
「ほら、明後日に武術大会があるじゃん。それに参加しに行くんだよ」
「え、世界武術大会の地区予選にですか? それは危なくないですか?」
「こう見えても普通のじじいじゃ無いからな。この前よりも強くなってるぞ!」
「そ、そうですか……」


 話を聞くと、ドーンはもっと北の大陸出身だそうだ。しかもその大陸で先週あった地区予選で勝ったらしい。そして、今からレイスの参加する大会に行って敵情視察するそうだ。


「俺が優勝すると思うから、宜しく」
「ははは……」


 この前ドーンと会った時よりも、随分強くなったと思う。設定上は強さを取り戻す、ってやつなんだけど。

 ニャン太の「メタんじゃねえよ!」というツッコミが無い事に寂しさを覚える。


「そういえば、最近魔物の動きが以前より活発になっているらしいですね」
「そうなの? 何で?」
「分かりませんけど、噂では魔王の復活が近いんじゃないかって……」
「それは困るな。もっと鍛えないと勝てないだろ」
「そうですね。魔物の長ですからきっと強いですよね」
「魔王が復活しそうになると魔物の動きが活発になるの?」
「どうでしょうか? まあ、ただの噂ですから」
「ふーん」





 一抹の不安を感じながらも、今は目の前に迫った大会へ意識を向ける。もし魔王の復活が本当に近いのであれば、こんな所で負ける訳にはいかない。

 様々な思いが頭の中を駆け巡り、そして船酔いと共に消えて行った。




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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