第47話

文字数 1,364文字

 薙ぎ払った攻撃はかわされた。


「なかなか早いじゃないか」
「それが売りでね。年老いたじじいの反射神経で対応できるかな?」


 ジェニーは連続で突きを放ってきた。威力は弱いだろうが、その一撃一撃が早い。何発か掠ってしまった。この全国大会は賢者が待機しており、仮に死んでも蘇生して貰える。だから何の心配もせずに攻撃できるのだ。

 その為か1つの試合時間は短めだ。今のでもそのまま受けていれば致命傷になり得る。


「かと言って、こんな若造に簡単に致命傷は貰わんぞ」
「かと言って、って何だ」


 こちらもスピード重視の攻撃を繰り出す。何発かはガードされた。それ以外は上手くかわされる。距離を外しライトボールを撃つ。スピードはさっきの剣撃より遅い為、簡単にかわされる。


「流石だな!」


 ジェニーが動いた方向へ合わせてクロス斬り。ジェニーは少し怯むも後ろへ下がってかわす。そこへレイを発動。


 ドドドドド!


 光の柱がジェニーを襲う。流石にかわし切れないと判断したのか、ガードで耐える。


「じじい、魔法剣士なんだな。結構痛い、面倒な相手だな」
「ちゃんと勝ち上がってきたのが分かったか?」
「ああ、そうだな。速攻で倒すつもりだったのに凌がれたし」


 ジェニーは後ろに下がると魔法を撃ってきた。


「な、お前も魔法を使うのかよ!」


 気弾と呼ばれる属性関係なく使える、簡単なヤツだ。


「こんなもの。」


 よけながら何発かは聖剣で弾く。その下から急に岩がせり上がってきた。


「なんだと」


 岩に突き上げられて倒れこむ。


「地属性の魔法とは珍しい。今のはグレイブって魔法か」
「よく知ってるじゃないか」



 ジェニーはグレイブを発動させながら突っ込んできた。ヤツのメインはあくまで剣の方だろう。


「だが……甘いな」


 デスより魔法が弱い。デスハーピーよりスピードが遅い。ミノタウロスより力が弱い。

 先読みでグレイブをかわし、ジェニーの剣をかわして懐に潜り込む。光を纏わせた聖剣で一気に下から斬り掛かった。


「ライト斬り!」


 ドガアッ!


 横腹に直撃。ジェニーはそのまま吹っ飛んで行った。


「ぐ……何だよ。すげえの持ってるじゃん」


 辛うじて上半身を起こすジェニーだが、口から血を吐き出す。光の魔法を纏ったライト斬りだった事と、鎧のお陰で身体が切れはしなかった。だが、肋骨辺りも結構折れているだろう。

 立ち上がれないまま、ジェニーは魔法の詠唱に入る。まだ諦めていないのか?


「詠唱に入るとは、きついのがきそうだ」
「食らえ、グランダッシャー!」


 ジェニーからじじいに向かって、凄い勢いの岩の津波が起こった。


 ドゴゴゴゴ!


 岩の津波はそのまま壁まで勢いよく流れて行く。魔力の壁が魔法を撃ち消して観客へ届かない様にしていた。

 その津波の中心から光が通った。




 砂煙が収まり、地面は元の状態へ戻る。そこには剣を振り下ろしたじじいが立っていた。


「……まさか初戦から奥義を使う事になるとは」


 じじいは奥義・光の一撃で岩の津波を切り裂いていた。モーゼの海峡の様に岩を斬りのけたのだ。恐らく、魔法と砂煙が凄くて周りからは見えなかっただろう。



「ふう……おっ」


 視線の先にはジェニーが倒れていた。距離があったのでダメージは少なかっただろうが、光の一撃の余波が届いていたのだ。


「死んではいないが気絶している様だな。なんにせよ、俺の勝ちだ」




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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