第103話

文字数 1,261文字

 魔王は全身に力を込めた。


「私の本当の姿を見せてやろう」
「まさか、変身するとでも言うのか?」



 魔王の身体が闇に包まれる。その闇は一気に広がり、フロア内を駆け巡った。


「うわっ!?」
「何だこれは!?」




 少しの静寂の後、視界が元に戻る。その先には魔王が立っていた。その姿は、さっきの物と違っていた。よりシャープに、より禍々しく変わっていた。


「本当に変身かよ」
「いや、変身って言うか……」
「どちらかと言えば変身を解いたのだ。これが私の本当の姿だ」

「何か強そうになっちゃったな」
「ちょっとかっけえな」
「スサノオの時もそんなんだったけど、あんな感じが好きなのか?」
「猫の姿じゃ出来ない姿も多いだろうが」
「出来ない姿ばかりだろうが」



「……さて、そろそろ良いだろうか?」
「ああ、すまんな」
「気にするな。勇者レイスの最後の団欒なんだから」
「それはどうだろうな。少なくとも、お前を倒した後の未来ってものがある」
「勇者らしい台詞だな。良いだろう。未来とやらを掴んでみろ」

「じじい、負けるんじゃねえぞ!」
「ああ、この為に今まで生きてきたんだ」




 じじいは聖剣を構えた。魔王もいつでも飛び掛かってきそうな体勢だ。



「………」
「………」



 魔王は一気に間合いを詰めて、爪を振り下ろす。


「は、早い!」


 じじいは先読みでかわす。魔王は続いて攻撃を繰り出してくる。聖剣でガードするが、勢いは止まらずに弾かれる。


「お前の回避能力は相変わらず驚異的だな」


 魔王は手のひらから闇属性の気弾を連射した。


 ドン! ドォン! ドガァン!


 聖剣でガードするが、数発被弾する。



「威力が強い……普通の気弾でこれかよ」
「どうした? この前の奥義は使わないのか?」
「ああ……出し惜しみしている場合じゃないわな」



 じじいは魔力を溜めた。

 聖剣を翳し奥義を使用する。



「奥義・光の風!」


 じじいの全身に光が纏わり、能力が上がる。常時MPが減っていくから、ここからは短期決戦になる。


「お互いに全力だな。これで安心して戦えるだろう」
「わざわざ待ってくれるなんて、優しいんだな」
「相手を倒すのを待っていたのは勇者だけでは無いって事だ」
「もう逃げるのは無しだぜ」
「もちろんだ。ここで決着を付けてやろう」



 魔王は爪を振り下ろす。じじいは聖剣でガードするが、もう力負けはしない。


「思った以上のパワーアップだな」
「ああ、何とかな」


 じじいは魔王の爪を横に流し、ライト斬りを放った。今度は魔王がもう片方の爪でガードする。



「ふっふっふ……倒しがいのある」
「こっちの台詞だな」


 じじいは後ろへ下がり、魔法を発動する。同じく魔王も魔法を発動した。



「レイ!」
「ダークフレイム!」



 レイは敵の頭上からの攻撃。ダークフレイムは前面への攻撃。互いの魔法は交差する事も無く、お互いに向かって行った。


 ドドドドド!


 光の柱が魔王を襲う。魔王はガードする。


 ドゴオォン!


 じじいは聖剣でダークフレイムを切り裂いた。斬り千切られた魔法が四散する。



「結構互角だな。でもじじいは……」


 じじいのMPが尽きた瞬間に敗北が決定するのだ。





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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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