第78話

文字数 1,299文字

「よお、ケーオ」
「ん? お前はヘンリーか」
「いやあ、流石だな」

「あんなもん普通だ。それより今年もお前は出場して来ると思っていたが」
「残念ながら負けちまってな」
「そうか。で、誰だ?」
「レイス、ってじいさんだ」

「じいさん? そう言えば居たな」
「ああ、しかも普通にやって負けたからな」
「お前の強さは中々のものだ。じいさんがそんなお前に勝ったと?」
「ああ。普通の強さじゃ無いじいさんなんだ」


「今回はレイスのじいさんの応援で来てるんだ」
「ふん、慣れ合いやがって」
「でも来年は出場するつもりだぜ」

「それは好きにしたら良い。俺は今回も優勝する。そして引退だ。今まで溜めた金と今回の賞金で、一生遊んで暮らす」
「つれないじゃないか」
「俺の人生だ」



「……変なクスリをやってる、って怪しんでいるヤツもいるぜ」
「……」
「そんなもん使わなくても十分に強いだろう」
「お前には関係ない」

「言っとくけど、レイスのじいさんは強いぜ。今の俺を軽くあしらえる位には、な」
「……覚えておこう、じゃあな。」



 ケーオはそのまま去っていく。




「ケーオ……剣士なら堂々と戦ってみろよ」





「さあ、もうすぐ2回戦が始まりますね」
「まずは金銀銅って格闘家か」
「ただいま」
「あ、どうでしたか?」

「いやあ、特に進展はねえかな。世間話で終わっちまった」
「そうですか……」


「金銀銅はあのラッシュがやばかったな」
「そうだな。まあ対応策はあるよ」
「どうするんだ?」
「大きく飛び退いて魔法を撃って牽制すれば良い」

「まあ相手もそれくらいは想定してるだろうけどな」
「相手の想像の上をいけば良いだけだ」




「レイス選手、まもなく試合が始まりますので宜しくお願いします」
「おうよ」


 じじいは廊下へ出る。ちょうど金銀銅も廊下へ出て来ていた。


「おお、レイス選手。宜しく頼むぞ」
「こっちこそ宜しくな」



 2人で並んで闘技場へ向かう。なるほど、こいつは強そうだ。バランスの取れた筋肉。スピードもあるだろう。手甲は鋼だろうか? ちょうどこっちからはミニバックラーは確認できない。



 闘技場の中心で向かい合う。バックラーは実際に見てもやはり小さい。あれに当てて攻撃を流す技術も凄いだろう。


「第2回戦、第1試合。武闘家・金銀銅選手VS魔法剣士・レイス選手」



「さて、どちらが強いか勝負だ」
「もしかしてコイツも暑苦しい系なのか?」



「バトル、スタート!」



 じじいは聖剣を構える。金銀銅もオーソドックスに構える。不用意に貰わないように気を付けないと。


 金銀銅が少しづつ近付いてくる。一定の距離になったかと思った瞬間、金銀銅は下段蹴りを放った。


 パシイッ!


 想像以上の速さにガードも出来ず足に被弾する。


「くっ、早いな」


 1回戦でもそうだったが、こいつは完全な肉弾戦法スタイル。こんな蹴りを何発も受けていられる余裕はないだろう。


 じじいは聖剣で突きを出す。


「甘いぞ」


 バックラーで外側へ弾かれる。そのままバックラーの付いている方の手でパンチを放つ。じじいは後ろへ下がりそれを回避した。


「ここまでしっかりした格闘戦は経験が無い。どこかで流れを変えないと、やられてしまう」



 じじいは距離を取り、ライトボールを放った。




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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