第26話

文字数 1,143文字

「ナイスファイトだったな」
「ありがとうございます」


 少し疲れてはいるが、次の試合までには落ち着くだろう。


「正直、今までにやった事の無い戦法でした。でもあのままでは負けていましたからね」
「いや、とっさにあのやり方を行えたのが凄いよ」


 これで戦いの幅が広がり、より強力なライバルになってしまったかもしれない。



「それでは第2試合を行います。5番と7番の選手は奥へどうぞ」

「今度は俺の番だな」
「私は勝ちました。レイスさんが負けるのは許しませんよ」
「任せておけ」




 闘技場で相手と向かい合う。1回戦の様子だと、変わった剣技の持ち主の様だ。


「それでは第2試合を行います。左側……斬新な剣技で1回戦を攻略しました。酔剣の使い手、剣士ヘーベレッケ選手!」
「今度は酔っ払いかよ。へべれけかよ」

「右側……1回戦では素晴らしい動きで圧勝しました。聖剣流の使い手、魔法剣士レイス選手!」
「ちょっと強いくらいのじじいめ。俺の酔剣が見切れるもんか」


「バトル、スタート!」



 ヘーベレッケは徐にヒョウタンを取り出した。まさか本当に酔拳みたいな感じなのか?


「ごくごく……ぷはーっ。俺の酔剣は酔えば酔うほどに強くなるんだよ」
「うわあ、めっちゃ飲んだ。大丈夫かよ」


 ヘーベレッケはフラフラしながら近寄ってきた。どうあしらおうか迷っていると……


 ブン!


「うおっ!? 上手くかわしたけど、凄い攻撃が来た」


 信じたくはないが、本当に酔拳みたいな感じだ。油断すると攻撃を食らいそうな予感。


「ういー」
「大丈夫、よく見ればいける」



 攻撃の瞬間のインパクトが凄まじい。先読みを発動し、次々と攻撃をかわしていく。


「じじいやるじゃん。だが、これでどうだ?」


 そう言うと更に酒を飲みだす。


「これで段々と強くなっていくと言うのか?」
「ぷはー。さて覚悟は良いか?じじい」





 取り敢えず遠くからライトボールを連発した。次々とヒットする。


「何だ、これで良かったのか。」


ヘーベレッケはうつ伏せに倒れても、擦り擦りと這ってきた。


「こんにゃろーういー」
「さて、止めをさすか」


 勿論、殺すとかではない。




 近寄って剣を構えた時に、ヘーベレッケが凄い勢いで起き上がり攻撃を仕掛けてきた。


 ガキン!


 何とか防ぐも、勢いに押され後ろへ吹っ飛んでしまう。打ち付けた背中が痛い。


「何なんだこいつ。……レイ!」


 ドドドドド!


 光の柱がヘーベレッケを次々と撃ち抜いた。


「にょわーっ!?」


 そして動けなくなった。




 ダウンなのか戦術なのか、兵士は慎重に判断しようとしていたが。


「い、良いですね?……決着です。レイス選手の勝利です!」


 勝ちは決まった。わあっ、と歓声が起こる。


「こんなわけの分からないのと、もう戦いたくないな」



 珍獣と出会った後かのような気持ちで、じじいは控室へ戻った。




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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