第93話

文字数 1,236文字

~天界~




「精霊王様、なにやら地上がおかしな事になっていますね」

「どうした、光の精霊? 何かあったのか?」

「はい。勇者とふにゃにゃんが一緒に居ます」

「ふにゃにゃんだと。何故地上に?」

「遊びに行ったのでは?」

「どれどれ……本当だな。しかももう1人居るではないか」

「あれはニャン太ですよ」

「違うだろう。いや、あの精霊見習いは確かに居るが。イフまで居るじゃないか」

「あら、本当ですね。普段から見ている顔なので見落としていました」

「全く……何を遊んでいるのか」


「連れ戻しますか?」

「……そうだな。流石にイフが地上で暴れるのはいけないだろう。正体まで現して……しかも相手は勇者だぞ」

「ふにゃにゃんを連れ戻しに行ったのでしょう。ついでにふにゃにゃんも連れ戻しましょう」









「うおおっ!」


 じじいの攻撃をイフは素手で受け止める。そのまま炎の魔法を放ってくる。それを先読みでかわし、じじいは更に斬り掛かった。


 ガキィッ


 思った以上に強靭な皮膚だ。並みの攻撃ではダメージを与えられない。じじいは聖剣に魔力を溜める。


「俺も手伝うぜ」


 ニャン太はイフに攻撃を仕掛ける。が、炎の魔法に阻まれる。上手くかわすが、近付けない。


「レイ!」


 ドドドドド!


 光の柱がイフを襲った。


「……この魔法。まさかな」


 イフは爪で攻撃してきた。ガタイが良いのに素早い。


 ギィン!


 爪攻撃を聖剣で弾き逸らし、じじいは斬り付けた。



「ライト斬り!」


 イフはライト斬りをもう片方の手で受け止めた。



「まさか……渾身のライト斬りなのに、素手で受け止めるなんて」
「こいつガチで強い」

「そうか……やっと分かったぞ。光の魔法と猫……そしてお爺さん」
「何をブツブツ言っている」


 じじいは再び聖剣に魔力を込める。こうなったら奥義で攻撃だ。じじいの聖剣が光り輝く。イフの右手に炎を纏わせた。


「貴方の実力、見せて貰いましょうか」
「いいぜ、奥義をみせてやろう」



 2人は互いに駆け寄った。聖剣と爪の力比べだ。


「奥義・光の一げ……」
「いけません!」





 ガシイッ!




 2人の間に光の精霊が割って入った。片手でイフの爪を、片手で光の一撃を受け止める。


「ひ、光の精霊様!?」
「光の精霊……なぜ此処に?」


 2人は力を解く。


「なになに、何が起こったんだ?」


「無闇に地上で暴れるものではありません」
「……わざわざ止めに来たのですか?」
「そうです。これは精霊王様の意思でもあります」
「……それは仕方ないですね」

「恐らく、ふにゃにゃんを連れに来たのでしょう」
「そうです。勅命を受けましたのでね」
「ふにゃにゃん、出て来なさい」


 洞窟からふにゃにゃんが出て来る。


「もうおしまい? 早かったのね」


「光の精霊様、これはいったい……」
「ニャン太、貴方は会うのが初めてでしたね。イフは炎の精霊なのですよ」
「にゃんだって!?って事は……炎の精霊イフリート様!?」


「ふにゃにゃんは神様の作り出した新しい生命体なのです。神様に黙って地上へ遊びに出たので、連れ戻すように神様より依頼を受けました」




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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