第48話

文字数 1,094文字

「それまで。レイス選手の勝利です」


 防音であまり聞こえないが、観客が湧いているのが見える。王様が居るであろう場所は中が見えなくなっている。じじいは観客に向けて手を挙げる。横では回復魔法を受けたジェニーが起き上がっていた。


「いやあ、アンタ強いな。やられちまったよ」
「お前も中々のもんだったぞ」




~ヘンリーの部屋~



「やりやがったな。流石、ミノタウロスを倒しただけあるぜ」


 まるで自分の事のように喜ぶ。


「わかるぞ。レイスのじいさん、奥義を使ったんだな? ちゃんと見えてはいないけど、微かにあの時の光が見えた」


 この時点で決勝で当たる可能性として、完全にじじいが上がった。恐らくはレイスかルーキだろう。




~貴賓席~


「やりましたね、レイスさん。」
「ほう……データを見た時には信じがたかったが。あの選手、本物じゃないか」
「はい。とても強い方です。おかしなクスリを使用している形跡もありません」
「ふむ。もう少し若ければ城に欲しい所だったが」


 勿論この王様は知らないであろう。200年前に当時の王様が若きレイスを勧誘していた事を。




 魔法陣で部屋に戻る。目をふさいでいれば魔法陣酔いを起こさない事に気付いてしまった。


「これで今日の試合は終わりだな。明日は2回戦と3回戦がある」


 2回戦はじじいの前に戦った戦士。3回戦は恐らく、前回準優勝者の自称勇者。


「勇者は俺だからな」


 ベッドに腰を降ろし、息を吐く。ジェニーは思っていたより強かった。


「優勝するのは骨が折れそうだな」





~今日のニャン太~




「ふにゃー、何て良い日だ。こんな日に昼寝をしないなんて神様に怒られちまうぜ。よし、昼寝をしよう」


じじいは勝っているだろうか? 油断してなきゃいけるだろうが。


「よっしゃ! じじいが留守の間に、こっそり買っておいた高級猫缶を食べちまうぜ。う~ん、猫満足!」








「はい、はい。それで宜しく」


 暫くすると電話で注文した料理が魔法陣に現れた。


「きたきた。ニャン太のいない今だからこそ、高級ディナー食べるぜ。う~ん、じじい満足!」



 どうやら普段は節制させられているらしい。

 じじいの次の試合で、今日の試合日程は終了した。テレビでは特別チャンネルで好きな試合を何度でも見れるらしい。熱心なヤツは次の対戦相手を分析しているだろう。


「次の戦士は問題ないと思うんだよな。問題の自称勇者は戦っていないし」


 ヘンリーより弱いんだろうが、その時の運が悪かっただけって可能性もある。更に修行して強くなっているだろうし。


「明日の試合は2回戦が第7試合目で3回戦が第4試合目か。でも1試合目にヘンリーが出るからな。」



 色々考えている内に、じじいは眠りについた。




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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