第21話

文字数 994文字

 ニャン太。


 光の精霊がレイスに遣わせた使い魔。実際は属性のない精霊であり、その力は並みの魔物より強い。時が経った今となっては、本当の姿は光の精霊と本人にしか分からない。




「ふにゃあーっ!」


 ガキィン!


 じじいより早く発動するはずだったデスの魔法は、ニャン太の爪で鎌を折られ不発に終わった。


「な、そんな馬鹿な!?」


 その言葉が終わるかどうかの間にじじいの魔法が発動。


「今だ! レイ(光の閃光)!」



 無数の光の柱がデスを襲う。


 ドドドドドド!


「ぐおおおっ」


 怯むデス。勿論、これだけで倒せない事は分かっていた。じじいは一気に詰め寄りライト斬りを放つ。大会でのそれとは違う、確実に敵を切り裂く剣閃。


 ザシュ!


 その一撃はデスの身体を深く切り裂いた。


「そんな……信じられん。」


 デスは力なく倒れこむ。

 猫が自慢の鎌を折った事に驚く。老人が自分を切り裂いた事に驚く。そして、過去に感じた覚えのある気に驚く。



「この気は……この魔力は……まさか、勇者レイスだというのか……!?」
「この俺の正体に今頃気付いたのか。」
「残念だったな。その情報を誰にも伝えられずにお前は滅ぶんだ。」

「ふっふっふ……老いてなお、この魔王直属軍のデス様を倒すのか」
「魔王直属軍?」



 もうデスからの返事は無かった。身体の先から順番に消えて行った。



「魔王直属軍って言えば、魔王軍の中でもエリートだったな。生き残りの魔物が居たんだな」
「そう言えば昔、聞いた事があったかも」
「まあじじいは物覚えが悪いから仕方ないよな」
「いやいや、何年経ったと思ってるんだ」





 デスが立っていた先に宝石が置いてあった。紅く光る手のひらサイズの大きさだ。


「これを守っていたんだろうか?」
「魔物が宝石をか? 何か特別なものなんだろうか?」
「まあ良く分からんが、記念に貰っておこう」
「高く売れるかな? 高級猫缶を買えるかな?」
「いやいや、記念だっての。」


「にしても今回は危なかったな。」
「確かに…お前の助けが無かったらだいぶやられてた」
「別にじじいは不死だからな。放置しても死にはしなかったんだろうけどな。」
「不死でも怪我はするし、動けなくなる事はあるよ。何より怪我したら次の大会に出れなくなる所だった。」


 魔法系との実践練習が足りないな、と思いながらじじいは元の道を戻っていく。


「あ、ランプが切れる…」




 帰り道は光の魔法で壁を照らし壊しながらになりそうだった。




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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