第18話

文字数 911文字

 塔の中は思ったより明るかった。窓が複数あるうえに、微妙に崩れている箇所もあったのだ。


「外から見てる時には崩れているのは気付かなかったな」
「夕方になると流石に見えにくくなるかもな。俺は夜目がきくから大丈夫だけど」
「……猫じゃねえか。」



 塔の一階は何もなく、だだっ広いフロアだった。奥の方には上り階段が見える。


「ゴーレム居なくないか?」
「野生のゴーレムだから普段は見えないんだよ」
「何それ怖い。そもそも野生のゴーレムって何なんだ?」



 ゴゴゴゴゴ…



「え、何の音?」
「来るぞ、じじい」


 壁・床・天井から薄い光が集まって、形作っていく。光が収まる事にはゴーレムが現れた。


「うわあ……思ったより小ぶりなゴーレムだ」
「まあじじいの相手にはちょうど良いんじゃね?」


 小柄といっても2メートルはある石の塊なのだ。昔に戦った事のある野生じゃないゴーレムだったら、倍くらいの大きさだった。それを考えたら小ぶり、というだけだ。


「塔の床や壁と同じ材質のゴーレムなのか」
「自然物から漂っている自然な魔力によって発生する。自然ゴーレムなのだ」
「何かたのしそうだなこの猫」



 ゴーレムがゆっくりと動き出し、こちらを向く。そして攻撃態勢に入る。自然ゴーレムにとって、外から来た生物は異物なのだ。


「グゴゴゴ」


 動作より早めのパンチを振り下ろしてくる。石の塊であるゴーレムの攻撃は、流石に受け止めるのが難しそうだ。じじいは後ろへ飛び退きよける。


 ドゴーン!


 塔が軽く揺れる。


「うおっ、こんなん食らったらヤバイって」
「かわせない速さじゃない。落ち着いてかわして攻撃を当てていくんだ」


 近付き剣を振るう。


 ギィン!


 手応えはあるが、どれだけダメージが通ったのか分からない。


「硬いな」
「まあ石だからな」
「聖剣じゃなきゃ刃が欠けてしまいそうだ」



「魔力を持った無機物の魔物であるゴーレム。一発直撃するだけで死ぬかもしれないという緊張感。じじいはどう攻略するのか!?」
「このくそ猫! 実況してるんじゃねえ!」
「じじいが戦闘不能になったら、俺が助けてやるよ」
「緊張感が薄れるなあ……」



 集中して攻撃をよけたり捌いたり、確実に攻撃を与えていく。スリルのある修行が始まったのだ。




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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