第55話

文字数 1,283文字

 ジリリリリリ


 目覚ましで目を覚ます。何となく目覚めが悪い気がする。


「何か夢を見たような気がするけど……覚えてないや」


 思い出せないって事は大した夢でも無いのだろう。



「さて、ついに最終日か」


 今日は準決勝・三位決定戦・決勝の3つがある。


① ヘンリーVSスボイト
② 影牙VSじじい
③ ①と②の敗者
④ ①と②の勝者

 の全4試合だ。




「まずはヘンリー達か」


 まだ時間がある。電話でパンとコーヒーを注文し、シャワーを浴びる。ヘンリーもスボイトも、まだ手の内を隠している。現状ではどっちが強いかは分からない。だからこそ、この2人の準決勝は見逃せない。

 シャワーから上がり、届いていた食事を机に置く。コーヒーを1口すする。


 影牙は今までずっと試合開幕に魔法1発で終わらせている。あの魔法をどうにかしてからが本番だろう。あの魔法以外の実力は分からない。魔法の対策だけに力を使い果たす訳にはいかない。その後の影牙本体との戦いがある。その後の決勝戦もある。

 やっぱりあの策でいくか。






「それでは、準決勝戦、第1試合。ヘンリー選手VSスボイト選手」


「さあ、どっちが強い。どっちが俺の決勝戦の相手になる?」


 ヘンリーとスボイトは互いに構える。


「この準決勝はアンタが来ると思っていたぜ」
「私もです。前回優勝者の貴方と戦うと思っていた」
「両想いか。有難いな」


 スボイトは素早い突きを繰り出す。ヘンリーはそれを切り払い、斬り掛かる。


「早いじゃないか」


 連続で斬り掛かるもスボイトは上手く捌いていく。


「そちらもです。やはり今までの人達とは違う」


 スボイトは槍に魔法を込め始めた。一気に間合いを詰め、鋭い一撃を見舞う。


「食らえ、疾風突き!」


 ギィン!


 剣で弾こうとするが、威力に負けて押される。後ろに下がりながらヘンリーは剣に魔力を込める。


「魔法剣ガイア!」


 剣から放たれた魔力が拡散しスボイトへ襲い掛かる。スボイトは槍で一気に薙ぐ。


「いくら魔力を込めた槍とはいえ、1振りで消すかよ」
「結構な衝撃でしたよ。流石ですね」




「実力は伯仲と言った所……いや、若干スボイトが押しているか?」



「申し訳ないが、決勝が控えているんです。遊び無しで全力を以って攻撃させて貰います」
「へえ、とっておきを見せてくれるのかい?」
「ええ。覚悟して下さい」


 スボイトは詠唱を始めた。魔法? いや、魔法剣みたいなものなのか?


「俺だって負けちゃいられないな」


 ヘンリーも剣に魔法を込める。少し間が空き、2人が一斉に動き出す。


「オーラ!」


 無属性の魔法を槍に込めて一気に突き出す。


「奥義・オーラ突き!」
「これで終わらせてやる、魔法剣ギガイア!」


 こちらは剣に魔法を込めて斬り掛かる魔法剣だ。奇しくも無属性同士の攻撃。これは単純に強い方が勝つ。


「うおおおっ!」
「うおおおっ!」





 ギイィン!



 ヘンリーの剣が弾かれて、スボイトの槍がヘンリーの肩に突き刺さる。魔力の勢いでヘンリーは、そのまま後ろへ吹っ飛んで行った。


「う、ぐぐぐ!」
「さ、流石です。魔法剣の威力が強かったので、私の槍が反動でズレてしまいました。でも、これで勝負は決まりましたね」




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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