第71話

文字数 1,087文字

 世界大会の会場は毎年変わる。各国を順番に移っているのだ。今年はじじいの居る王国の隣の国で行われる。



「船で約5日間掛かるのか……もう船酔いで死んでしまいそうだ」
「5日も乗っていれば慣れちゃいますよ」
「何だよじいさん、船に弱いのか?」
「ああ、これだけはどうしようもない」


「しかし新鮮だな。お前が大会に同行するなんてな」
「にゃー(もう魔王はあそこに居ないからな)にゃーん(俺が残っている必要は無い訳だ)」
「いや、にゃーじゃ何言ってるか分かんないから」
「にゃー(人前だからな)」




 一応、部屋はある程度良い部屋にした。少しでも船酔いに負けずに、モチベーションを上げる作戦だ。


「どっちみち船酔いはするんじゃん」
「ふう、猫の真似は疲れるぜ」


 この良い部屋のブロックは、3部屋ともじじい達で借りている。ニャン太が騒いでも大丈夫なのだ。


「何だよ騒ぐって」



 運動すると言っても、大きな動きは出来ない。じじいは恐らく、世界で1番船酔いをする。


「結局、寝てしまうのが1番だよな」






 王国に着いたら取り敢えず宿屋に行く。会場に近い宿屋は予約できた。その日と次の日で調子を整えて、世界大会に挑む。



 コンコン


 ドーンとヘンリーが来た。


「ケーオは本当に魔王に関係しているのでしょうか?」
「分からないな。でも、今の所は他に情報が無いんだしな」
「まあ可能性があるんだったら、確かめるしかないわな」

「でももしさ、ケーオに魔王が憑いているんだったらどうなんだ? めっちゃ強くなってたりするのか?」
「多少の恩恵はあるだろうな。でも身体は人間なんだ。限界はあるよ」
「へぇ、そんなもんなのか」

「他に、魔王がどれくらい回復しているかにもよるな。まだまだ本調子じゃなかった場合は、苦戦しないかも」
「それは大会で実際に見てみるしかありませんね」



 もしケーオに魔王が憑いているというのが本当だとして、考えようによっては魔王を倒すチャンスなのかもしれない。魔王はケーオが世界大会に出て、じじいと戦うかもしれないという事は知らないだろう。ただ、ケーオに魔王が憑いていない場合……本当に無駄な行動になる。大会中に離れた場所に魔王が現れてしまうと、色々と危険だ。


「そもそも、ケーオはクスリ込みだとしても去年の世界大会優勝者なんだろ? 元がめっちゃ強いんだよな」
「そうですね。クスリを使用する所を現行犯で捕えないといけません。でも強すぎるので、薬が切れてから取り押さえないと」
「俺も去年、ケーオと戦ったけど強かったぜ。結果的に言えば、軽くあしらわれたからな」


「どっちにしろ、大変そうだな」


 道中は船酔いには悩まされたが、退屈はしなかった。




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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