第67話

文字数 1,124文字

 魔王が腕を挙げた瞬間に、じじいはいっきに詰め寄りライト斬りで斬り付けた。魔王は隙を突かれ、対応できずに食らう。


「ぐおっ!?」
「まだまだ!」


 じじいはそのまま奥義を繰り出した。


「奥義・光の一撃!」


 ズシャアッ!


 確かな手応えがあった。奥義の一撃は魔王の身体を深く切り裂いた。更に運が悪い事に、魔王ビームがじじいの居る場所……つまりじじいと魔王を撃ち抜く。



 ドゴオォォォン!


 聖剣に魔力を込めてガードするが、あまりの勢いに飲み込まれ吹っ飛ぶ。今回は手足が無くなってはいないが、かなりのダメージを受けてしまう。


「ぐ、ぐおおお…」



 魔王は上げていた腕が消滅しており、膝を着く。奇しくも魔王の奥義を受けた2人は、互いに動けない程に消耗していた。


「こ、こんな事が」


 魔王はゆっくりと立ち上がり、詠唱を始めた。


「な、何をする気だ」


 じじいはまだ動けずにいる。MPが尽き、光の風の力も消えてしまった。



「こんな所で死ぬわけにはいかぬ。勇者よ、今回は負けを認めてやろう」
「え……?」
「しかし私が、復活したばかりで半分の力しか出せていなかった事を忘れるな。次はこうはいかぬぞ」
「まさか、逃げるのか」


 魔王はテレポートを唱えた。空間を移動する魔法だが、生物が発動するのは初めて見た。機械や装置を利用しての近距離の簡易テレポートしか見た事は無い。


「暫くはこの傷を癒させて貰う。お前を殺し、この世界を征服するのはそれからだ」



 魔王は光に包まれたかと思うと、一瞬で消え去った。





「逃げやがった……いや、助かったのか」


 実際、このまま戦いが続いていても勝てなかった。全てを使い果たし、未だに動く事が出来なかったのだ。



 ニャン太がヨロヨロとこっちに来た。


「じじい、無事か?」
「ああ、何とか生きてるぜ。」


 ニャン太は薬草を使用した。お陰で何とか動ける程度にはなる。


「ふう、今回ばかりはダメだと思った。魔王が力を出し切れていない状態で良かった」
「そうだな。本当に復活したばかりだったからな」
「あれで半分の力なんだってよ。全盛期の俺は本当にアイツに勝ったのか?」
「まあ、勝ったけど。今日の感じだと、前回は魔王が全力を出す前に一気に倒し切った感じなのかもな」



 じじいを包んでいた謎の光が消えて行った。


「この光は何だったんだろう。これがあったから相打ちにまで持って行けた」
「この気は……光の精霊様かもしれない」
「光の精霊様?加護を受けているお陰なのかな」
「分からない」


 兎にも角にも、今日は生き延びた。結果、魔王は倒せなかった。何時かは分からないが、奴は再びじじいと対峙するだろう。今度は全力の姿で。



「帰るか」
「ああ。」


 全国大会の疲れも癒し切れていない状態。とにかく家でゆっくりしたかった。




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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