第57話
文字数 1,303文字
真空の刃が次々とじじいを切り刻む。思っていた通り、全く動けない。思っていた通り、人体を切断する程の威力は無い。とは言え、こんなのが百発レベルでやってくるのはキツ過ぎる。斬られた場所から出た血液が風に乗って、次々と空に舞っていく。血の竜巻だ。
暫くして風は収まり、そこにはじじいが残った。
「……え?」
そりゃ驚くだろう。今まで何者も寄せ付けなかった魔法攻撃。それを直撃させたじじいが無傷で居るのだから。
「ふう、やっと終わったか」
「な、何で無事なんだ」
影牙は驚きながら後へ下がる。じじいはその隙を見逃さず、一気に詰め寄った。
「ライト斬り!」
じじいを倒せなかったのが余程ショックだったのか、影牙はライト斬りをモロに受ける。
「ぐおおおっ!」
吹っ飛んで倒れた影牙はすぐに立ち上がる。もし本当に忍者なのだとしたら黒装束の中には鎖帷子が仕込んであるだろう。それでも肋骨を骨折してしまった様だ。
「ついつい大会用の切り裂かないライト斬りを使ってしまうな」
実際のライト斬りはデスに使ったような斬り伏せるタイプの剣技。大会ではなるべく斬らずに衝撃でダメージを与える様にしているのだ。もしかしたら本来のライト斬りであれば、試合は終了していたかもしれない。
「ぐ……何で無事なんだよ」
「後で試合映像でも見て考えな」
影牙は刀で斬り掛かる。骨折のせいか威力は弱い。
ギィン!
聖剣で軽く受け止める。
「許さねえぞ、じじい!」
影牙は近接で魔法攻撃を放ってきた。先読みでかわすじじい、これが火遁の術というものだろうか? よけはしたが、いきなりの攻撃に対応できず反撃は出来なかった。
「頑張るじゃないか。でももう限界じゃないか?」
「五月蠅い!」
影牙はまた刀で斬り掛かって来る。こいつは恐らく、最初の魔法攻撃がメインの戦法なんだろう。剣を弾きそのまま、今度は本来のライト斬りを横一線に払う。
ズシャッ!
もともと光の精霊から光の加護を受けた時に、その光属性の魔法を駆使して放つ魔法剣。そもそもの性能が違うのだ。
「ま、こうなるわな」
影牙は真っ二つになり地面に落ちた。もはや鎖帷子であろうと鉄の鎧であろうと関係ない。そんな威力で放った、相手を殺す為の攻撃だった。
「それまで、レイス選手の勝利です」
歓声が巻き起こる。人を殺しておいてこの歓声、と言うのが未だにしっくりこない。
賢者が治療の為に影牙の方へ向かう。それを見る事もなくじじいは部屋に戻って行った。
部屋に戻り、ため息をつく。
「いや、本当に上手くいって良かった」
あの時にじじいは奥義の光の雫を発動した。あの奥義は、自分の立っている辺りに回復の魔法陣を作り出す技。回復の魔法陣の上にずっと立っていたお陰で、ダメージを食らってもすぐさま回復。最終的には全回復し無傷となったのだ。
「今までの試合を見て、腕や足が切断される事は無かったからな。あの奥義で凌げるとは思っていたが……にしても良かった」
あの奥義は結構MPを使う。HPや傷は回復してもMPは回復しない。普通の戦いなら常に移動している為、この奥義は向かない。本来キャンプを張った時などに使用する技だ。
「これで後は決勝だけだな」
暫くして風は収まり、そこにはじじいが残った。
「……え?」
そりゃ驚くだろう。今まで何者も寄せ付けなかった魔法攻撃。それを直撃させたじじいが無傷で居るのだから。
「ふう、やっと終わったか」
「な、何で無事なんだ」
影牙は驚きながら後へ下がる。じじいはその隙を見逃さず、一気に詰め寄った。
「ライト斬り!」
じじいを倒せなかったのが余程ショックだったのか、影牙はライト斬りをモロに受ける。
「ぐおおおっ!」
吹っ飛んで倒れた影牙はすぐに立ち上がる。もし本当に忍者なのだとしたら黒装束の中には鎖帷子が仕込んであるだろう。それでも肋骨を骨折してしまった様だ。
「ついつい大会用の切り裂かないライト斬りを使ってしまうな」
実際のライト斬りはデスに使ったような斬り伏せるタイプの剣技。大会ではなるべく斬らずに衝撃でダメージを与える様にしているのだ。もしかしたら本来のライト斬りであれば、試合は終了していたかもしれない。
「ぐ……何で無事なんだよ」
「後で試合映像でも見て考えな」
影牙は刀で斬り掛かる。骨折のせいか威力は弱い。
ギィン!
聖剣で軽く受け止める。
「許さねえぞ、じじい!」
影牙は近接で魔法攻撃を放ってきた。先読みでかわすじじい、これが火遁の術というものだろうか? よけはしたが、いきなりの攻撃に対応できず反撃は出来なかった。
「頑張るじゃないか。でももう限界じゃないか?」
「五月蠅い!」
影牙はまた刀で斬り掛かって来る。こいつは恐らく、最初の魔法攻撃がメインの戦法なんだろう。剣を弾きそのまま、今度は本来のライト斬りを横一線に払う。
ズシャッ!
もともと光の精霊から光の加護を受けた時に、その光属性の魔法を駆使して放つ魔法剣。そもそもの性能が違うのだ。
「ま、こうなるわな」
影牙は真っ二つになり地面に落ちた。もはや鎖帷子であろうと鉄の鎧であろうと関係ない。そんな威力で放った、相手を殺す為の攻撃だった。
「それまで、レイス選手の勝利です」
歓声が巻き起こる。人を殺しておいてこの歓声、と言うのが未だにしっくりこない。
賢者が治療の為に影牙の方へ向かう。それを見る事もなくじじいは部屋に戻って行った。
部屋に戻り、ため息をつく。
「いや、本当に上手くいって良かった」
あの時にじじいは奥義の光の雫を発動した。あの奥義は、自分の立っている辺りに回復の魔法陣を作り出す技。回復の魔法陣の上にずっと立っていたお陰で、ダメージを食らってもすぐさま回復。最終的には全回復し無傷となったのだ。
「今までの試合を見て、腕や足が切断される事は無かったからな。あの奥義で凌げるとは思っていたが……にしても良かった」
あの奥義は結構MPを使う。HPや傷は回復してもMPは回復しない。普通の戦いなら常に移動している為、この奥義は向かない。本来キャンプを張った時などに使用する技だ。
「これで後は決勝だけだな」