第28話

文字数 1,064文字

 ドーンの魔法を先読みでかわしていく。こうしていると、先のデス戦を思い出す。あの時はなす術が無かった。結果的にはニャン太に救われたようなものだった。


「くっ、どうしても魔法相手には苦戦しがちだ」


 全盛期であれば魔法もかなり使えたんだが……


「流石はレイスさん、このままではMPが尽きてしまう」


 そう呟くとドーンは連続でじじいの前の空間を爆発させる。砂煙が上がり視界が悪くなる。その時間を利用し呪文の詠唱を開始した。



「くっ、前が見えない」


 それでもドーンの方で魔力が集中されているのを感じた。


「この感じ……札を切ってくるのか?」


 砂煙が収まる頃には詠唱は完了していた。


「レイスさん、今からの攻撃で決着を付けます」
「お前のとっておきが見れる訳だな」
「ええ、とっておきです」



 ドーンは手のひらをじじいに向けた。その手から魔法を発射させる、としか思えない。そして真正面から受け止める事は難しいだろう。魔力が違う。


「エクスプロージョン!」


 掛け声と共にドーンの手のひらから炎の渦が放たれた。


「な、炎の魔法だと!?」


 驚きながらもギリギリで先読みを発動し魔法をかわした。しかし炎の渦は旋回し、再びじじいに向かってくる。


「レイスさん、私は実は魔導師なんです。複数の属性の魔法を扱えるんですよ」
「なかなか素晴らしいな。強力な魔法もそうだし、相手の意表もついてきてる」


 炎の渦を再度かわす。しかし変わらずに旋回してくる。


「何かに命中させないと消えないのか?」


 向かってくる渦に集中する。





 後ろにドーンが居た。そっと添えられる手。よけられない事を悟る。


「貴方は貴方の教えてくれた作戦で敗れるんだ」


 後ろから爆発魔法が発動。これは直撃だ。


「ぐっ!」


 ほんの少しの時間差で炎の渦が前からじじいを襲った。


 ドゴーーーン!


 さっき以上の砂煙が巻き起こる。



 ギィン!



 砂煙がやっと収まると、そこには倒れたドーンと立っているじじいの姿があった。



「え……」


 兵士は混乱していたが……


「決着です。レイス選手の勝利です!」




「う、うぐぐ……何?」
「食らうと覚悟しておけば、意外と耐えられるもんだ。魔法を食らう直前から、ずっと回復魔法をかけ続けていたし。」
「な、なるほど。回復魔法も使えるんですね。もしやレイスさんも、実は魔導師だったとかですか?」
「そんなんじゃ無いよ。俺は勇者……元勇者だ。」


 ドーンは気絶していた。結局はいつもの剣の柄での水月突きだから、命に別状もないだろう。


「一瞬、駄目かな? って思っちまった。ドーン、強かったぜ。」



 そう言うとじじいは控室へ戻った。




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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