第59話

文字数 1,258文字

 魔法陣から小部屋に移り、小部屋から階段を昇り闘技所へ入る。もう5回目の闘技場入りだ。もうこの大会最後の。

 闘技場の中央へ行った辺りで、反対側からヘンリーも顔を見せる。良い顔だ、しっかりと気持ちを仕上げている。


「よお、レイスのじいさん。まさか本当に決勝まで来るなんて思わなかったぜ」
「よお、ヘンリーのボウズ。お前こそよくスボイトに勝てたもんだ」
「まあな。あれはヤバかった。でも勝ったのは俺だ。それが全てだぜ」
「そうだな。俺が勝って優勝する。それで全てだ」
「黙れじじい」


 実際の関わりはあまり無かったかもしれない。だが、久し振りに会った友人の様に感じてしまった。きっと向こうも同じだろう。



「皆様、お待たせしました。只今より今大会決勝戦を始めます」


 歓声が大きく沸く。熱気が防音でもしっかりと伝わってくる。防音だから熱気は関係ないか……



「Aブロック代表、ヘンリー選手。2回戦からの圧倒的な勝利に加え、準決勝戦での死闘。それを乗り越えての最終戦です。」

「え、何? 決勝だからこんな説明やるの?」

「Bブロック代表、レイス選手。高齢ながら素晴らしい動きと技、何よりそのタフネスさ。全てが規格外です」

「確かに規格外だわな。俺がじじいになって、こんなに動ける気がしないぜ」


「3日間における大会の最終戦。この国で1番強い人間が、今決まります」


「さて、楽しませてくれよ」
「楽しめればいいけどな。その前に倒れるなよ」




「決勝戦…バトル、スタート!」




「心配しなくてもお前を倒して1番になる。その後の世界大会でもお前の代わりに優勝してやるからな」
「いや、世界大会へ行くのは今年も俺だ。若いモンにリベンジの機会を与えなきゃな」



 2人は静かに構える。

 決勝戦が始まった。




 互いに一気に掛け寄り、剣を合わせる。


 ギィン!


 鍔迫り合いになるが、流石にパワーではヘンリーには勝てない。じじいは押しのけられながらライトボールを数発放つ。ヘンリーはそれを剣で弾きながら間合いを詰める。突き攻撃をかわして、続いて来た薙ぎ払いを剣で弾く。


「あれ? とっておきは出さないで良いのか?」
「ああ、もうちょっと楽しんでからだな」


 そう言いながらヘンリーは魔法剣ガイアを撃って来る。先読みでそれをかわし、レイを発動。


 ドドドドド!


 無数の光の柱がヘンリーを襲う。ヘンリーは横へ飛び退き回避するが、かわし切れずに何発かはガードする。そこへじじいが突撃し、剣撃を放つ。

 かわしてカウンターの攻撃をするが、じじいは先読みでギリギリかわしカウンターでクロス斬り。


 ガキィン!


 ヘンリーの薙ぎ払いでじじいの剣が弾かれ、じじいは後ろへ少し飛ばされる。



「いや、やっぱ普通のじいさんじゃ無えわ。単純な打ち合いだけなら、さっきのスボイト以上だぜ」
「お前の捌きもかなり上手い。去年ルーキに勝ってるのは、マグレじゃないんだな」
「楽しくなって来やがった。ここからは、もうちょいギアを上げるぜ」


 ヘンリーの剣に魔力が籠っていく。魔法剣ギガイアを使用するつもりだろう。


 じじいも聖剣に魔力を込める。




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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