第32話

文字数 1,035文字

 デスハーピーは変身を解いて魔物の姿に戻った。黒い翼が印象的な、名前通りのデスハーピーだった。


「何で人間の大会に紛れ込んだんだ?」
「暇だったからね。のんびり楽しく暇潰しをしようとしたのさ。あの人間が私を殴らなければ、もっと平和に終わったのさ」
「貴様! 相手が魔物だと分かったんなら遠慮はしない。本気で倒させて貰うぞ」
「人間のじじいなんかに私が倒せる訳がないじゃないか」


 じじいはライトボールを放つも、デスハーピーは簡単にかわす。


「やっぱ身体能力は人間の比ではないのか」
「どうせ残るはアンタとの決勝だけだったんだ。アンタを殺して終わらせてやるよ」


 デスハーピー魔法を放ちながらこちらへ突っ込んできた。露になった大きな爪と魔法が一気に襲い掛かる。そもそもが魔法タイプではないのだろう。魔法攻撃の精度は思った程ではない。魔法をかわして、爪を聖剣で弾く。


「流石この大会で勝ち進んで来ているだけはあるわね。でもいつまで耐えられるかしら?」


 いくら魔法の精度が低くても、あれだけ撃たれるのは脅威でしかない。凄まじいスピードと強力な爪を考えれば、魔法だけに気を張る訳にもいかないのだ。


「レイ!」


 光の柱がデスハーピーに襲い掛かる。


 ドドドドド!


 2発ほどヒットする。……が、ガードされておりダメージは少なそうだ。


「大会の締めがじじいってのが残念だけど。せいぜい私を楽しませてごらんなさい」
「ぐっ、また向かってきた」


 ギィン!


 爪を弾くがさっきより威力がある。じじいは後ろへ飛ばされる。そしてデスハーピーは間を置かず追撃してくる。


「こんな所で負ける訳には!」


 先読みで爪をかわす。そのまま斬りこんだ攻撃が、デスハーピーの腹部を掠る。


「うっ、このじじい!」


 デスハーピーは怒りながら魔法を連発する。暫くかわすも、捌ききれずに何発か食らう。そして爪で攻撃してくる。


 ギィン!


 聖剣で受け止める。力を入れて撃ち負けないように踏ん張る。


「ぐ、このままじゃヤバイ。ジリ貧でいずれやられてしまう」


 しかし相手がこうやって近接攻撃を仕掛けている内がチャンス。向こうの爪が当たる距離は、こっちの剣が当たる距離でもあるのだ。剣に魔法を込める。剣が光輝く。


「ライト斬り!」


 剣で止めをガードしている状態から、無理やり横に薙ぎ払った。デスハーピーは少し体制を崩すも、すぐに立ち直り距離を取る。

 多分アイツは魔法で牽制をし、隙をみて爪で斬り掛かるタイプ。同じような攻防がまた続くのだろう。どこかで崩さないと……




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登場人物紹介

【レイス】

本作の主人公。

200年前に魔王を打ち破った勇者。

光の精霊の加護を受けており、光属性の魔法や魔法剣を使用する。

【ニャン太】

勇者レイスの使い魔。

光の精霊がレイスに遣わせた精霊見習い。。

猫の姿は仮の姿である。


【ポコポコビッツ】

200年前に勇者に敗れた魔王。

封印されており、復活する時を待っている。

闇属性の魔法を使用する。

【ドーン】

ルファウスト王国の宮廷魔術師。

とある要件でとある人間を追っている。

主に無属性の爆発魔法を使用する。

【ヘンリー】

ルファウスト王国に住む魔法剣士。

世界大会で優勝するのが夢。

無属性の魔法剣を使用する。

【ポーン】

サーザリッド王国の兵士。

研修でルファウスト王国へ来ており、大会での案内等を行う。


【光の精霊】

レイスに光の加護を授け、ニャン太を遣わせた本人。

レイスに間違えて「不老不死」でなく「不死」を与えてしまったおっちょこちょいさん。

【魔王直属軍】

200年前は大きな軍だった。

レイスと戦って敗れた事でかなり数を減らしてしまった。

魔王が封印された後は、殆どの者が目的も無く過ごしている。

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